研究課題
骨格筋(食肉)の筋線維タイプ組成は食肉の栄養特性や物性(硬さ)に大きな影響を与えることが知られている。ほ乳類では運動トレーニングに伴い、速筋タイプの筋線維が減少し、遅筋タイプの筋線維が増加することが古くより知られている。この速筋から遅筋への変換は、現在普及した考えでは、分化が終了した筋線維で生じるイベントと考えられている。しかし我々は未分化の筋衛星細胞がこの筋線維タイプ変換に寄与すると着想した。すなわち、未分化の筋衛星細胞が分化・融合して新しい筋線維タイプに置き換わるという可能性である。本研究では運動に伴い、既存筋線維に融合する筋衛星細胞が、筋線維タイプ変換に寄与すると仮説をたて、薬剤処理で後天的に筋衛星細胞を死滅できる遺伝子組換えマウスと、筋芽細胞の移植実験を用いて、この仮説を証明することに挑戦することとした。平成27年度は、Pax7-CreERT2マウスとR26RDTAマウスを交配させたマウスを導入し、繁殖を行った。また、タモキシフェンを投与して衛星細胞が死滅したか確認するための抗Pax7抗体を用いた免疫染色の準備を実施した。また、以下の様に移植細胞の検討は別途進めた。再生後の筋線維タイプに筋衛星細胞が影響を与えるかを調べるために、td Tomatoという赤色蛍光タンパク質を全身で発現するtd Tomatoマウスから筋衛星細胞を採取し、筋損傷を与えた野生型のマウスに移植を行った。本実験条件では、再生後の移植細胞の生着は認められたが、再生筋線維への融合は観察はできなかったため、野生型でなく衛星細胞欠損マウスでの移植が必要であることが分かった。興味深いことに再生後の筋線維タイプ組成に有意な変化が認められた。2年間の成果として、筋再生における筋線維タイプ変換に筋衛星細胞が関わる事が予測され、またその検証のための動物の準備が整った。今後これらのマウスを利用した研究の発展が期待できる。
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