研究課題
出血性の下痢を主徴とする家禽・家畜のコクシジウム症は、腸管粘膜に形成される『シゾント』と呼ばれる虫体の増殖によって惹起される。本研究は、現行抗コクシジウム剤に代わる安全性の高い薬剤の標的分子を発掘するため、盲腸上皮に寄生する鶏コクシジウム症の病原虫Eimeria tenellaのシゾント形成過程における嫌気性エネルギー代謝の応答機構を、分子細胞生物学的及び生化学的に明らかにする。得られた知見は、コクシジウム原虫の代謝機構を逆手にとった、原虫の生理生態に基づく抗コクシジウム剤の開発に資する。初年度は、シゾント形成の発端は何か、またいつどこで始まるのか。また、多数のメロゾイトを包含するシゾントの包囲膜は、一過性の新生オルガネラであることから、その形成過程の形態学的特性を明らかにするために、メロゾイトの侵入からシゾント包囲膜の崩壊に至る過程を、シゾント形成が減弱した早熟株とその親株である致死性の強毒株を用いて初雛で作製し、器官・細胞レベルでシゾントの形成機構を解析した。①分離シゾントの解析ではメロゾイト含有数の量的変化及び構成蛋白質の質的変化を調べ、2次元電気泳動などによる蛋白分画を用いて、シゾント・メロゾイトを認識する特異抗体を作製した。ロプトリー、マイクロネーム、密顆粒、シゾント包囲膜を認識する抗体を得ているが、後の可視化解析や生化学解析を迅速に展開する1次抗体を作製した。盲腸上皮細胞の可視化解析では経時的に固定した盲腸標本あるいはマイクロダイセクションで分離した単一上皮細胞を、作製した各種上記1次抗体を用いて免疫染色を行い、シゾントの局在を時間軸に沿って解析し、メロゾイトのシゾント外への放出時の様子が明らかとなった。さらに、電子顕微鏡を用いて、シゾントの微細構造についても観察し、脂質2重膜の膜形成の開始像を確認することができた。
2: おおむね順調に進展している
シゾント形成に参画する責任分子が複数単離され、局在等も明らかにできたことからほぼ予定通り進んでいる。
シゾント形成の責任分子で構築されているネットワーク機構を明らかにするためには消化管臓器レベルでの解析が必要であり、生鮮標本の作製を急ぐ必要がある。
26年度に完了予定であったシゾント形成虫体の次世代シーケンス解析がアライメント等の解析項目の追加が生じ、成果の入手が次年度になったことから、解析費用の支出が平成27年度となったため。
4月に完了予定の次世代シーケンス解析費用に充てる。
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Nucleic Acids Research
巻: 43 ページ: D631-6
10.1093/nar/gku1240