昨年度までにネコ22種のV1Rを特異的に発現する遺伝子組み換え線虫を作成できたので最終年度は作成した遺伝子組み換え線虫を使い、行動解析を繰り返し実施してリガンド探索系としての有用性を詳細に検証した。更に線虫の行動解析の裏付けを強固なものにするために、GCaMP(緑色蛍光タンパク(EGFP)、カルモジュリン(CaM)、ミオシンフラグメント(M13)を結合させたカルシウムセンサータンパク質)を忌避性AWA神経細胞に発現させた遺伝子組み換え線虫にV1R受容体-リガンドペアが同定されているマウスV1Rf3を発現させ、リガンドであるβエストラジオールに対する線虫AWA神経細胞の応答を調べた。ネコV1Rレパートリーを7種または5種発現した2系統の遺伝子組み換え線虫を作成し、ネコの尿脂質に対する忌避活性を走化性指数で求めた。その結果、2種類の遺伝子組み換え線虫で尿脂質に対する走化性指数は、それぞれ平均、-0.3、-0.4であり、野生型の線虫と比較して、有意に忌避行動を示すことが分かった。 次にGCaMPとマウスV1Rf3の両方を共発現する遺伝子組み換え線虫にβエストラジオールを60秒間提示して、βエストラジオールを抜いた際のAWA神経細胞の反応をカルシウムイメージングで調べた。その結果、細胞内カルシウム濃度の一過性上昇が確認でき、V1Rf3 を発現する遺伝子組み換え線虫がリガンドに反応している可能性が示唆された。本研究で、これまで作成した遺伝子組み換え線虫は、哺乳動物のV1Rを機能的に発現している可能性が示唆された。今後は、実際にネコの尿脂質から遺伝子組み換え線虫も使ったバイオアッセイでフェロモン候補物質の探索を更に進めたいと考えている。
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