研究課題
本研究では、これまでにカザフスタン在来馬の集団より採取したDNAサンプルを用いて、各種のDNA多型マーカーの解析を行うことで、これら集団の遺伝的特徴を解析し、他の在来馬集団および既存品種の馬と比較することにより、本集団が他の家畜馬とは由来の異なる集団であるか否かを明らかとすることを目的とする。本年度は、まずカザフスタン南部および西部で飼育されている在来馬より得られたDNAサンプルについて、ミトコンドリアDNAの多型の解析、Y染色体特異的DNAのハプロタイプの解析、さらに毛色及び体型に関する機能的遺伝子の解析を行った。カザフスタン南部および西部から収集されたカザフスタン在来馬のDNAサンプルを用いて、ミトコンドリアDNA Dループ領域の塩基配列を決定し、データベース上に登録されている多くのウマミトコンドリアDNAの配列と比較したところ、カザフスタン在来馬には他の品種には見られない新たなミトコンドリアDNAハプロタイプが存在することが明らかとなった。一方で、Y染色体のハプロタイプの解析では予想に反して、在来馬に広く認められるHT1の頻度は低く、アラブ系のウマに見られるHT2 の頻度が高く、さらに英国サラブレッドに特異的に認められるHT3も一定の頻度で認められることが明らかとなった。また、機能的遺伝子の解析では、集団中における各遺伝子の対立遺伝子の分布は他の品種における分布と大きな違いは認められなかった。以上の結果から、カザフスタン在来馬は母系の遺伝的多様性は富み、他の品種とは異なる固有の遺伝的特徴を持つが、父系についてはアラブ種やサラブレッドを含む外来品種の影響を受けている可能性が示唆された。
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