研究課題
ホメオドメイン転写因子であるTlx1は脾臓原基に発現し、その欠損により無脾臓症となることが知られている。今回、Tlx1遺伝子座にCreER-IRES-VenusカセットをノックインしたTlx1CreER-VenusマウスとRosa26-tdTomatoレポーターマウスを交配したTlx1CreER-Venus; Rosa26-tdTomatoマウスを用いることにより、本転写因子の脾臓器官形成における役割について検討した。脾臓器官形成が始まる直後の胎齢12.5日にタモキシフェンを投与することで脾臓原基細胞をtdTomatoで標識し、脾臓の器官形成に伴うTlx1発現細胞の分化運命について、胎齢18.5日の時点で解析した。Tlx1CreER-Venus遺伝子アレルをヘテロに有するマウスでは正常に発生した脾臓がtdTomatoで標識されているのに対し、同アレルをホモに持つマウスでは脾臓を欠損する一方、脾臓と共通の原基から発生する膵臓にtdTomatoの発現が認められた。膵臓に認められるtdTomato発現細胞はアミラーゼ陽性の外分泌腺、インスリン陽性の内分泌腺、DBA-lectin陽性の膵管上皮細胞ではなく、デスミン陽性ビメンチン陽性の間葉系細胞であることが判明した。すなわち、Tlx1を欠損すると、本来なら脾臓として発生すべき間葉系細胞が膵臓の間葉系細胞へと分化することが明らかになった。以上の結果から、Tlx1は脾臓原基に存在する間葉系細胞の分化運命を規定しているものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
1.脾臓原基由来および膵臓原基由来の膵臓間葉系組織の生体での機能比較Tlx1欠損マウス(Tlx1CreER-Venus/CreER-Venus; R26R-tdTomato)膵臓に存在する脾臓原基に由来する膵臓間葉系細胞(tdTomato陽性)は、インスリン、アミラーゼ、DBAレクチンを発現せず、ビメンチンおよびデスミン陽性の間葉系細胞であった。また、Tlx1ホモ欠損マウスとコントロールマウス(Tlx1CreER-Venus/+; R26R-tdTomato)を用いて、膵臓機能について、グルコース負荷試験などの血液学的解析を行った結果、膵臓機能に差は認められなかった。2.脾臓原基由来膵臓間葉組織と膵臓原基由来膵臓間葉組織の遺伝子発現の網羅的比較解析脾臓原基由来膵臓間葉系細胞(tdTomato陽性)と背側膵臓原基由来膵臓間葉系細胞(tdTomato陰性)の間で、マイクロアレイ法により発現している遺伝子の網羅的解析を行った。
1. 時期特異的Tlx1欠損マウスを用いた胎仔ならびに成体脾臓間葉系組織の膵臓への分化転換に関する解析を行う。2.脾臓に膵島を移植することで、脾臓微小環境の膵臓再生における役割を検討する。
Tlx1-floxマウスを購入して、成体脾臓細胞の膵臓への分化転換能を解析する予定だったが、ES細胞の品質検査の段階で不具合が認められ、購入を断念したため、それに関わる経費を使用しなかった。
現在、独自にTlx1-floxマウスを作製しており、その経費として使用する。
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Genesis
巻: 52 ページ: 916-923
10.1002/dvg.22829
http://www.ribs.tus.ac.jp/laboratories/block05/