研究実績の概要 |
本研究グループではBt菌が産生する殺蚊トキシンCry4Aaに由来する新規のペプチドタグ(4AaCter)を開発している(特許第46042321号、US patent No. 8865428)。4AaCterを連結したタンパク質は大腸菌でアルカリ可溶性の凝集体を形成する。凝集体形成には4AaCter内部で高度に保存されている配列(Block7, 33アミノ酸)が重要な役割をもつと考えられるが、その詳細は未だに明らかでない。 本年度はBlock7(B7)による凝集体形成の仕組みを明らかにする目的で、B7配列のN末端及びC末端欠失変異体を構築して、それらと連結したタンパク質(グルタチオン S-トランスフェラーゼ,GST)の凝集体形成率の変動を観察した。興味深いことにB7配列をN末端側から順次欠失させた5種の変異体(N807, N812, N817, N822, N827)において、凝集体形成率は2段階に分けて減少した。同様にC末端側から順次欠失させた4種の変異体(C809, C814, C819, C824)において、凝集体形成率は3段階に分けて減少した。これらの結果から、B7配列に凝集体形成に関与する機能構造が2カ所存在することが示唆された。そこで本研究では凝集体形成に関与するB7配列内の機能構造(F802-K809、及びL822-S829)を便宜上、MIF1及びMIF2と呼ぶことにした。4AaCterに由来するB7配列を他のCryトキシンのアミノ酸配列と比較解析した結果、MIF1及びMIF2はB7配列内で最も相同性の高い領域を挟むように、比較的多様な配列の領域内に位置していた。MIF1を含むGST融合変異体(C809)とMIF2を含むGST融合変異体(N827及びN822)の結合を水晶発振子マイクロバランス測定法(QCM法)で解析した結果、この2カ所がホモもしくはヘテロに結合することが凝集体形成に関与すると考えられた。
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