ペプチドタグ4AaCterを付加したタンパク質を大腸菌で発現させるとアルカリ可溶性のタンパク質凝集体を形成する。本研究ではタンパク質生産の効率化に4AaCterタグを利用しており、特に臨床検査薬材料となる抗原タンパク質の生産に有効であることを実証してきた。本年度は殺虫タンパク質(Bt菌TK-E6株に由来するCry46Ab)の製剤化に4AaCterタグが利用できないか調査した。 Cry46Abはヒトガン細胞に選択的な細胞損傷活性を示すCryトキシンであるが、蚊幼虫にも殺虫活性を示すことが最近になって明らかになっている。本研究ではタンパク質のC末端側に4AaCterタグを付加して発現する新しい発現ベクターp4AaCter-Cを構築し、そこにCry46Ab遺伝子を挿入した(Cry46Ab-4AaCter)。組換えタンパク質を大腸菌で生産した結果、タグ無しCry46Abの凝集体形成率が61%であったのに対し、4AaCterタグを付加することで凝集体形成率が100%に上昇し、その生産量も約4倍に上昇した。一方、Cry46Abの殺蚊活性は4AaCterタグを付加することで1/3近くまで減少してしまった。Cry46Ab-4AaCter凝集体のアルカリ可溶性を解析した結果、pH9-11での可溶性が低下しており、タンパク質の正確な折りたたみが行われなかった可能性が考えられた。そこで大腸菌の培養温度を37℃から30℃に下げて凝集体を生産した結果、タグ無しCry46Ab凝集体と同程度の高い殺虫活性を示すCry46Ab凝集体を得ることができた。本研究の結果は4AaCterタグの付加が殺虫トキシンの効率的生産、及びトキシンの製剤化に有効であることを示していた。
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