研究課題/領域番号 |
26660270
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伴野 豊 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50192711)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カイコ / エリサン / シンジュサン / 凍結保存 / 卵巣 / 精巣 / 胚子 |
研究実績の概要 |
CAS冷却はカイコの卵巣凍結保存の高度化に優れた効果があると予想して研究を計画した。しかし、従来法に比べ大きな効果は期待できないことが判明し、今年度はカイコに近縁なエリサンの凍結保存の可能性を中心に実験を進めた。CAS冷却による効果は認めなかったが、カイコで開発した卵巣の凍結保存方法は、エリサンの卵巣と精巣の凍結保存に有効であることが見出された。具体的には4齢1日の幼虫から卵巣を摘出し、液体窒素中に1日以上凍結し、融解後に宿主となるエリサン個体へ移植し、羽化後、通常飼育したエリサン雄を交配して産卵させ、産卵状況で評価を行った。移植後の生存率は90%程度と高く、羽化した雌蛾の大半が産卵した。雌蛾1頭あたりの産卵数は平均130個で、そのうちの40%は受精卵であった。受精卵からの孵化、その後の発育が正常であることを確認した。精巣への応用も少数で試験を行い、有効であることを認めた。シンジュサンにおいても同様な試験を行い、エリサンには劣るものの、凍結保存が可能であることを認めた。 一方、胚子を用いてガラス化法という凍結保存方法を試験した。従来法に比較するとカイコの胚子発育でステージ16から26と定められているステージにおいて、ガラス化法が従来法を上回る良好な効果を認めた。ステージ24とされる剛毛発生期には2頭の完成胚子が得られた。しかし、無凍結で得られる胚子と比較すると、卵内物質の取り込みが劣ると判断されたので、更なる検証が必要な段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題ではCAS冷却に大きな期待をかけて、長期保存の高度化を目指したが、CAS冷却の効果は少ないことが2年目に判明した。そこで、対象生物や凍結時期を変えて効果を試みたが、その結果も従来法と比べ有為に高くなる効果は得られていない。但し、エリサン、シンジュサンも凍結保存が可能であること、胚子を用いたガラス化方法が有望であることが示される等の成果は得られている。
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今後の研究の推進方策 |
カイコの胚子段階にガラス化法を用いることで、長期保存の可能性が昨年の研究成果で得られた。胚子発育期の剛毛形成期(ステージ24)を中心に孵化幼虫が得られること、それらの個体が正常に成長するかを確認する。生殖巣を用いた長期保存に関しては、シンジュサン、サクサン等での有効性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験材料の調達が予定通り進まなかったこと、当初の研究方法を変更して行なう必要が生じたため、研究期間を延長することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
実験材料の入手に要する旅費、実験に用いるガラス器具、プラスチック類の消耗品に使用する予定である。
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