研究課題/領域番号 |
26660271
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
LEE JAEMAN 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50404083)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | dsDNA取込み / 遺伝子導入法 / BmN4-SID1 |
研究実績の概要 |
我々は、これまで、線虫SID1遺伝子を導入したカイコ培養細胞BmN4-SID1がdsRNAのみならず、dsDNAを取込むことを報告している。そこで、昆虫細胞における効率的な遺伝子導入法の確立を目的として、多様な昆虫由来培養細胞に線虫SID1遺伝子を導入し解析した。その結果、カイコPS140-SID1細胞がBmN4よりも良好なdsDNA取込み能を示したが、カイコBm5-SID1細胞、ヨトウガSf9-SID1細胞のdsDNA取込み能は、BmN4-SID1より低く、細胞種により大きな相違があることが明らかになった。そこで、SID1遺伝子と協調して働いているSID2, 3, 4, 5遺伝子をBmN4-SID1細胞に追加導入したが、dsDNA取込み能は向上しなかった。また、核酸の取り込みに対する二価の金属イオンの影響を解析したところ、カドミウムを除く重金属は、dsRNAの取込みには影響を与えなかったが、コバルト、マグネシウム、亜鉛は、dsDNA取込み能を向上させることが明らかとなった。DNAとRNAのヘテロ2重鎖やヘテロ3重鎖については、いずれも取込み能を低下させることが明らかになったが、その過程でPCR産物がプラスミドDNAよりも高い取込みを示すことを見出した。また、BmN4-SID1において、内在の糖鎖修飾酵素FDLを阻害した場合、dsDNA取込み能が低下することを見出した。そこで、細胞の表面糖鎖を切断する酵素で処理することにより、dsDNA取込み能を向上できる可能性がある。そのために必要なPNGaseFとEndoHについてバキュロウイルスを用いたカイコ発現系を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのところ、研究は概ね順調に進行している。SID2, 3, 4, 5遺伝子の共発現やRNA/DNAヘテロ2重鎖については、遺伝子導入効率の向上効果が期待されたが、当初想定した結果は得られなかった。しかし、これらの結果から今後の研究の方向性を絞り込むことができた。また、副産物としてPCR産物が効率良く取込まれることを発見し、これが、構造に依存しているのか、DNA上の科学修飾に依存しているのか等、プラスミドDNAとの相違の原因解明に興味が持たれる。 いくつかの二価の金属イオンについては、遺伝子導入効率の向上に効果が認められたこと、また培地に添加するだけで容易であることから、他の方法との併用も考えられる。 さらに、細胞表層の膜タンパク質であるSID1の機能にN-結合型糖鎖がどのように関与しているのかを解析することは興味深い。生きた細胞の表面糖鎖を改変するためには大量の酵素が必要であると予想されるが、PNGaseFとEndoHについて、カイコ発現系を構築できた。本酵素は、組換えタンパク質としての大量発現が難しい高価な酵素であることから、本研究での用途に加えて、他の利用価値も高い。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度までの研究を継続するとともに、DNAを部分的に凝集させる効果を持つタンパク質や低分子化合物について、遺伝子導入効率に与える影響を検討する。また、dsRNAとdsDNAを結合できる親和性の融合タンパク質を作製し、dsRNAとdsDNAをこのタンパク質を介して結合させることにより、dsDNA取込み能の向上を目指す。dsRNAを結合するタンパク質としては、ラムダNタンパク質、dsDNA結合タンパク質としてはsso7dを用いる予定であるが、dsRNA結合タンパク質については、新規カイコ由来タンパク質の同定を試みる。 同時に、多数のカイコ糖鎖関連酵素について、それらの機能阻害細胞における遺伝子導入効率を解析する。
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