研究課題
初年度の研究より、寄生蜂脱出誘導因子の精製・構造決定が完了し、LC-MS/MSとNMR分析の結果から、活性因子がN-acetyl tyrosineであることが判明した。市販のN-acetyl tyrosineを寄生蜂脱出前のアワヨトウ幼虫に注射することによって、脱出誘導活性も確認できた。また、当該活性因子の分泌組織について解析した結果、当初予想していた脂肪体ではなく血球がN-acetyl tyrosineの分泌組織であることが明らかになった。恐らく、以前の予備実験において、脂肪体に活性が検出されたのは、脂肪体表面に付着した血球の寄与によるものと解釈できる。さらに、昨年度の研究結果より、腹部第9神経節の抽出液に寄生蜂脱出誘導活性が確認できていた事から、この点について更に詳細に分析を進めた。その結果、第9神経節に加えて脳抽出液にも脱出誘導活性が認められた。即ち、当該活性因子は脳から生産されて第9神経節へ送られそこから分泌されるか、もしくは、両組織で独立して生産・分泌されるものと予想される。現時点では後者の可能性が高い結果が得られているが、今後、更に検討を繰り返す必要がある。こうした神経細胞由来の活性因子と血球由来のN-acetyl tyrosineの関係を検討した。前者の神経細胞由来因子が血球からのN-acetyl tyrosine分泌を誘起するという作業仮説を立て、解析を行った。その結果、in vitroでの血球培養系に脳ー第9神経節抽出成分を添加することによって、培地中にN-acetyl tyrosineの濃度上昇が確認された。従って、脳ー第9神経節因子→血球→N-acetyl tyrosine分泌という作用機序が存在するものと結論付けた。神経細胞由来の新規生理活性因子の精製、さらに、構造決定については目下遂行中である。
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