研究課題
日本人になじみの深いシオカラトンボは、成熟過程でオスが麦わら色から水色へと変化する。2015年度までに、オスが水色になる過程で表面の微細構造が劇的に変化し、同時に強い紫外線反射能と撥水性を持つようになること、微細構造はWax様物質の分泌により生じることが明らかになっていた。Waxの分泌は雌雄だけでなく、背側と腹側でも差があり、オスでは背側でWax分泌と紫外線反射が強いのに対して、メスでは腹側でWax分泌と紫外線反射が強くなる傾向が確認された。近縁種で日陰を好むオオシオカラトンボではメスではWax分泌と紫外線反射が見られないことから、Wax分泌はトンボの生息環境や生態と密接な関係があることが示唆された。また、シオカラトンボの雌雄の背腹およびWaxをまとう他の種類でWaxの同定を試みた結果、全部で7種類の混合であることが確認された。興味深いことに、シオカラトンボのオス背側に多いWaxはメスや他の種類では見られないことが明らかになった。2016年度は、共同研究によりこのWaxの合成を行ったところ、1種類のWax合成品でも高い紫外線反射能と撥水性を有することが明らかになった。合成品は、結晶化させる方法によって表面構造が変化するが、滴下させた場合が生体に最も近い特徴を持つことが確認された。また、オスとメスおよび通常メスとオス型メスのRNAseq解析から、オスの背側に特徴的なWax生産に関わる候補遺伝子を複数同定することに成功し、特に差のある遺伝子を1種類特定することに成功した。
研究成果の一部は、今年度特許出願を行う予定である。
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Applied Entomology and Zoology
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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