当該年度では、土壌の物理化学的変化や土壌中の微生物の多様性・活性に違いが見られた有機栽培と慣行栽培との間で、野菜の品質に違いが生じるかに着目して実験を行なった。 6月13日、長崎県佐世保市に位置する有機農家の有機栽培圃場3平方m(2x1.5)に、細断して3kgのぼかしと混合した野菜・魚介廃棄物24.3kgを投入後、防水シートで雨の侵入を防ぎながら80日間かけて分解させた有機栽培水分適量区(以下、 a区)、同量の野菜廃棄物を投入後に30Lの水をさらに加え、同じ日数をかけて分解させた有機栽培水分過多区(以下、b区)および、化成肥料(NO3、P、K、各10kg/平方m)をは種時に投入した同面積の慣行栽培区(以下、c区)を設置した。8月31日にニンジン(Daucus carota)‘黒田五寸’、キャベツ(Brassica oleracea)をは種して翌年1月5日まで18週間育成し、ニンジンの肥大根およびキャベツの結球葉の活性酸素消去活性、糖度、ビタミンC含量、硝酸イオン含量を測定し、食味を評価した。 ニンジン肥大根の糖度のみ有意に異なり、c区が最も高く、a区、b区と続いた。それ以外の測定項目は、試験区間で有意な差がみられなかった。一方、食味には違いがあり、b、c区のニンジン肥大根にえぐみが強く感じられ、b、c区のキャベツ結球葉は、甘みとみずみずしさが強く感じられた。 以上の結果より、有機栽培のニンジンとキャベツでは、慣行栽培との味の違いがはっきりとしているものの、糖度、硝酸イオン含量、抗酸化力指標に違いがないことが示唆された。
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