研究課題
独立栄養生物である植物にとって、必須栄養素やエネルギーの体内リサイクルは過酷な環境下での生存戦略の一つとして極めて重要な意味を持つ。これらのリサイクル機構には、細胞自己分解システム「オートファジー」が、重要な役割を担っていることが明らかになりつつある。酵母で同定されたオートファジーに必須の遺伝子群ATGsは植物を含めた真核生物全般で保存されており、オートファジーの中核的なメカニズムは共通とされる。しかし、ATGを欠損するシロイヌナズナ変異体は基本的な生活環を完結することから、動物で報告されたように従来型とは異なる新奇オートファジー経路の存在が示唆される。本研究では、植物におけるATG非依存性の新奇オートファジー経路の存在について明らかにするとともに、その従来型オートファジーとの関係について検証することを目的として、今年度は新奇オートファジー経路の可視化系の構築について進めた。3種類のコンストラクト(35S:mKeima、35S:TP-mKeima、SAG12:SAG12-mRFP)を作成した。これらのコンストラクトを用いてシロイヌナズナ野生体の形質転換を行った。得られた複数の形質転換体候補種子の選抜を行い、目的の蛍光タンパク質が正しくより多く発現する個体の同定を進めた。それぞれのラインについて複数の形質転換体が得られたが、35S:TP-mKeimaとSAG12:SAG12-mRFPについては蛍光タンパク質の発現量が想定よりも低かった。
3: やや遅れている
今年度は、3種類のコンストラクト(35S:mKeima、35S:TP-mKeima、SAG12:SAG12-mRFP)をオートファジー欠損変異体(atg5, atg7)にも導入して、ATG非依存性のオートファジー経路の有無について検証する予定であったが、コンストラクトの作成ならびに野生体におけるコンストラクト自体の有効性の検証にやや手間取り、そこまで到達することができなかった。
今年度作成した形質転換体の選抜をさらに進めると共に、Keima以外の蛍光タンパク質の使用についても検討する。またオートファジー欠損変異体(atg5, atg7)へのコンストラクト導入については、アグロバクテリウムを用いた形質転換のみならず、現在選抜中の野生型バックグラウンドの形質転換体とオートファジー欠損変異体の交配により達成することも検討していく。
作成したコンストラクトをオートファジー欠損変異体(atg5, atg7)にも導入して、ATG非依存性のオートファジー経路の有無について検証する予定であったが、変異体を形質転換するまでに至らず、それにかかる物品費や人件費、その成果発表に係る旅費やその他の経費が不要となったため。
ATG非依存性のオートファジー経路の有無について検証するため、物品費は、植物栽培用品10個として計10万円、薬品10個として計20万円、旅費は、資料収集に1人、1回、10万円、学会発表費用に1人、1回、10万円、人件費は形質転換体の栽培補助に1人、2か月で20万円、論文の英文校閲の謝金に10万円、その他は、論文掲載料として10万円、程度を使用する計画である。
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Plant Physiology
巻: 167 ページ: 1307-1320
doi:10.1104/pp.114.254078
巻: 167 ページ: in press
doi:10.1104/pp.15.00242