研究課題
細胞膜透過性の良いペプチド(PTD)を探索している。これまでに報告されているペプチドについてN末、C末、またはその両方に結合させるなどして最も効率のよいものを検討した。GFP-Pin1を作成し、細胞導入されたかどうかを顕微鏡下で簡便に観察することを目指した。TAT, His porimer、または市販のペプチド配列など各種試験したがタンパク質を無駄なく効率良く細胞に導入することは難しいと感じている。したがって、PTD-Pin1そのものよりも、PTD-Pin1が細胞に導入されたかどうかを判定する評価系を作製することを優先的な課題に変更して研究を進めることに大きく方針を変更した。その結果、2種類の細胞評価系を作製することに成功した。第一に、Pin1-KO マウス胎児繊維芽細胞(MEF)を応用した細胞周期評価系を作成した。コントロールは野生型MEFとした。パピローマウイルスのE6, E7を各MEFに導入し MEFを不死化した。野生型とPin1-KO MEFの細胞周期状態を比較した。KOはG1期の細胞の比率が高く、野生型ではG2・Mの比率が高くなることを利用してPin1が細胞に導入されたかどうかをこの MEFの細胞周期の比率の変化により判定することができるようになった。また、第二に、Pin1-KO間葉系幹細胞は野生型間葉系幹細胞に比較して脂肪細胞へ分化しにくくなることを応用した脂肪細胞への分化評価系を確立した。さらにPin1の生物活性に対応した各組織や細胞での適した評価系を作製しているが、その一つとして一酸化窒素の産生酵素へのPin1の作用を定量的に測定する方法として、細胞内の硝酸・亜硝酸を定量する方法を開発した。
2: おおむね順調に進展している
細胞への導入効率の良いPTD-Pin1はまだ完成していない。しかし、PTD-Pin1の評価系として間葉系幹細胞の分化をPin1が促進していることを応用している。今年度は、より明瞭に分化する野生型間葉系幹細胞株を新たに確立した。Pin1の阻害剤の評価は画期的に容易になったことは当初予想していなかった成果である。
我々が作製したPin1-KO間葉系幹細胞株と野生型間葉系幹細胞でどのようなシグナル関連分子が脂肪細胞への分化を促進しているのかを解明する。また今までの作製したPTD-Pin1をテストしベストなPTD-Pin1を得ることを目的とする。
これまでは小スケールでの検討に時間がかかったので予想よりも経費がかからなかった。今後はスケールアップした実験を行い、また医学的専門家の意見を取り入れより意義のある成果とするように共同研究も活発にするので予算を最後年にも用意する必要があった。
幹細胞の脂肪細胞または骨細胞への分化の促進効果を指標にPTD-PIn1の評価を行う。またこれらの研究を医学的見地から分担者の内田千代子博士らによって検討することを行う。また発表も行う予定にしている。
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