• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2014 年度 実施状況報告書

ミトコンドリアをモデルとしたクマムシの極限環境耐性メカニズムの解析

研究課題

研究課題/領域番号 26660288
研究機関東京大学

研究代表者

國枝 武和  東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10463879)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワードミトコンドリア / クマムシ / 乾燥休眠 / 乾燥耐性 / プロテオーム
研究実績の概要

本年度はまず、ヨコヅナクマムシのトランスクリプトームデータにおいて大量に発現する遺伝子から、ミトコンドリアに局在し、かつ加熱しても沈殿しない(熱可溶性)タンパク質2種を同定した。1種はLEAタンパク質と相同性を示したが、もう一種はクマムシ類に固有の遺伝子であった。これらの遺伝子をヒト培養細胞に導入し、それぞれを定常的に発現する株を作出した。これらの定常発現株について比較的温和な水欠乏ストレスである高浸透圧曝露への耐性を計測した結果、いずれの遺伝子の定常発現株も親株に比べて高浸透圧曝露後の生存率が向上していることが明らかになった。今回同定した2種の遺伝子はいずれもクマムシのミトコンドリアにおいて乾燥耐性に寄与していると考えられた。
さらに、ミトコンドリアの耐性関連タンパク質を網羅的に同定するために、クマムシからミトコンドリア分画を単離し、質量分析を用いたショットガンプロテオミクス解析を実施した。単離したミトコンドリア分画は分画マーカーを用いたウェスタンブロットにおいて細胞質や小胞体の混入は認められず純度の高い分画が得られた。比較対象としてクマムシ全身の破砕液についても同様の解析を行い、両サンプルから合わせて約2000種類のタンパク質が検出された。ペプチドカウントをもとにミトコンドリア分画に濃縮されているタンパク質として約800種を同定した。このうちの約10%の遺伝子はクマムシに固有の新規遺伝子であり、耐性に関わる良い候補と考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

トランスクリプトームデータを活用した解析が順調に進行し、2種のミトコンドリア局在熱可溶性タンパク質を同定した。このうちの1つはクマムシ固有の新規タンパク質であり、これまでに同定されていた細胞質局在型、細胞外分泌型と合わせてクマムシが主要な細胞内コンパートメントに合わせて固有の熱可溶性タンパク質を持っていることを明らかにした。さらに、今回同定した2種のタンパク質がヒト培養細胞の高浸透圧耐性を向上させることを示した。これはクマムシ遺伝子産物により他種細胞の耐性を向上させた初めての例であり、計画を上回る達成度である。ショットガンプロテオミクスについても高純度のミトコンドリア分画の単離に成功し、比較ショットガンプロテオーム解析によりミトコンドリア分画に濃縮された多数のタンパク質群を同定した。課題は順調に進展している。

今後の研究の推進方策

今回、単一のクマムシ遺伝子の導入によりヒト培養細胞の耐性が向上したことから、同様の解析によって耐性を向上させる遺伝子群を同定することが可能と考えられる。
そこで、ショットガンプロテオミクスで同定したタンパク質の中から有力な候補を選別し、これらの中からヒト培養細胞の耐性を向上させる遺伝子群を同定する。
さらに、これまでに同定した耐性関連遺伝子を含めて複数の遺伝子を同時に導入することで、ヒト培養細胞により高い耐性能力を付与できるか検討する。
また、これらの遺伝子のクマムシにおける耐性への寄与を明らかにするためにゲノム編集技術を用いた機能阻害実験を試みる。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Novel Mitochondria-Targeted Heat-Soluble Proteins Identified in the Anhydrobiotic Tardigrade Improve Osmotic Tolerance of Human Cells2015

    • 著者名/発表者名
      Tanaka S, Tanaka J, Miwa Y, Horikawa DD, Katayama T, Arakawa K, Toyoda A, Kubo T, Kunieda T.
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 10(2) ページ: e0118272

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0118272

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Comparative Omic Analysis between anhydrobiotic tardigrade and desiccation-sensitive tardigrade2015

    • 著者名/発表者名
      Takekazu Kunieda, Makiko Ito, Koyuki Kondo, Sae Tanaka, Takuma Hashimoto, Yohei Minakuchi, Hideki Noguchi, Toshiaki Katayama, Kazuharu Arakawa, Atsushi Toyoda,, Takeo Kubo, Asao Fujiyama
    • 学会等名
      13th International Symposium on Tardigrada
    • 発表場所
      Modena, Italy
    • 年月日
      2015-06-23 – 2015-06-26
  • [学会発表] クマムシにおける乾燥耐性獲得時の遺伝子発現変動解析2015

    • 著者名/発表者名
      近藤小雪、加藤由起、白髭克彦、久保健雄、國枝武和
    • 学会等名
      日本農芸化学会2015年度大会
    • 発表場所
      岡山県・岡山
    • 年月日
      2015-03-29 – 2015-03-29
  • [学会発表] ケミカルジェネティクスを用いたクマムシの乾眠に関わるシグナル伝達経路の探索2014

    • 著者名/発表者名
      近藤 小雪、久保 健雄、國枝 武和
    • 学会等名
      日本分子生物学会第37回年会
    • 発表場所
      神奈川県横浜市
    • 年月日
      2014-11-27 – 2014-11-27
  • [学会発表] 乾燥耐性能力を持たないクマムシのゲノム解読と比較解析2014

    • 著者名/発表者名
      國枝武和、伊藤麻紀子、近藤小雪、水口洋平、野口英樹、片山俊明、荒川和晴、豊田敦,、久保健雄、藤山秋佐夫
    • 学会等名
      第37回分子生物学会
    • 発表場所
      神奈川県横浜市
    • 年月日
      2014-11-26 – 2014-11-26
  • [学会発表] 乾燥耐性動物クマムシで大量発現する新規膜タンパク質A8の解析2014

    • 著者名/発表者名
      島津拓真、橋本拓磨、阿部耕太、田中冴、片山俊明、荒川和晴、豊田敦、久保健雄、國枝武和
    • 学会等名
      第37回分子生物学会
    • 発表場所
      神奈川県横浜市
    • 年月日
      2014-11-25 – 2014-11-25
  • [学会発表] 乾燥耐性クマムシにおけるミトコンドリア局在タンパク質の同定と解析2014

    • 著者名/発表者名
      田中冴、秦裕子、尾山大明、豊田敦、片山俊明、荒川和晴、藤山秋佐夫、久保健雄、國枝武和
    • 学会等名
      第15回極限環境生物学会
    • 発表場所
      沖縄県 今帰仁村
    • 年月日
      2014-11-02 – 2014-11-03
  • [学会発表] クマムシにおけるミトコンドリアの乾燥耐性機構の分子基盤解析2014

    • 著者名/発表者名
      田中冴、秦裕子、尾山大明、豊田敦、片山俊明、荒川和晴、藤山秋佐夫、久保健雄、國枝武和
    • 学会等名
      第3回マトリョーシカ型生物学研究会若手招待講演
    • 発表場所
      兵庫県 神戸市
    • 年月日
      2014-07-11 – 2014-07-13
    • 招待講演
  • [図書] 極限環境生命―生命の起源を考え、その多様性に学ぶ2014

    • 著者名/発表者名
      伊藤 政博, 鳴海 一成, 佐藤 孝子, 中村 聡, 東端 啓貴, 國技 武和, 為我井 秀行, 道久 則之, 伊藤 隆
    • 総ページ数
      220
    • 出版者
      コロナ社

URL: 

公開日: 2016-05-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi