研究課題
昨年度において、クマムシ個体のミトコンドリア分画とクマムシ個体全体についてショットガン比較プロテオミクスを行い、ミトコンドリア分画に濃縮されているタンパク質群を多数同定した。本年度は、これらのタンパク質群から、クマムシに特徴的な耐性能力に関わる候補として、他の後生動物に相同遺伝子が見出されないタンパク質群に着目して解析を進めた。まず、候補タンパク質群から、ショットガンプロテオミクスで検出されたペプチドカウント数を指標として発現量の高いものから優先的な候補としてgfp融合タンパク質をヒト培養細胞に発現させ、ミトコンドリアに局在する性質を持つタンパク質群を選別した。選別した遺伝子群を個別にヒト培養細胞に遺伝子導入して安定発現細胞株を作出し、これらの細胞を用いて弱い水欠乏ストレスである高浸透圧環境への曝露耐性を検証した。その結果、これまでに少なくとも2種のタンパク質において高浸透圧耐性が向上することを明らかにした。さらに、こうしたタンパク質のヨコヅナクマムシにおける機能や耐性への必要性を解析するために RNAi 法の検討を行った。その結果、成体内に二本鎖RNAを注入することで全身における標的遺伝子の発現量が顕著に低下することを確認した。発現の低下量から全身性のsystemic RNAiが起きたと考えられる。今回確立したRNAiの実験系は、本課題で同定したクマムシ固有のミトコンドリア局在タンパク質の機能解明に有用であるばかりでなく、これまでに多様な手法で提案されてきた耐性候補遺伝子の機能解析にも道を拓くものと期待される。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
PLoS ONE
巻: 10 ページ: e0144803
10.1371/journal.pone.0118272
サイエンスネット
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