GPCR等の膜受容体の立体構造情報が集積されている。本課題ではこれらの情報を利用して立体構造情報に基づいた変異を細胞膜受容体へ加えることにより機能性改変を行い、受容体へ強結合性の合成リガンドを標的とした新規化学プロセス能を新規付与することを目的とする。これまでに、対象受容体(アデノシンA2aやドーパミンD1等のアミン作動性クラスA型受容体)に対して出芽酵母ならびに大量発現用酵母宿主を用いた安定発現株を作製し、誘導発現および可溶化条件の探索を進めてきた。本年度は前年度の踏襲となる変異型受容体抽出のためのスケールアップ生産・精製の最適化および結晶化、ならびにエステラーゼあるいはペプチダーゼといった加水分解酵素活性付与を想定して設計された対象受容体のリガンド結合性試験、活性測定系の策定を行った。A2a受容体については、ペプチドならびにエステル含有リガンドの結合サイト近傍への酸塩基触媒残基、結合表面の疎水性度を変動させる極性残基、触媒トリアドを部位特異的変異により導入し、これらを酵母膜に発現させたものを使用してリガンド結合性の変動を評価した。また、D1受容体変異体については3Lスケール培養からの単離精製を行い、最終的にアンタゴニスト結合性を有する標品およそ150 ugを得たことから、熱分析(Differntial scanning fluorimetry: DSF)によって融解温度Tmを測定した。算出されたTm値はおよそ66から75℃を示し、高い熱安定性を有することが示唆されたことから、この変異体を用いてリガンド結合表面の詳細を調査するための結晶化を実施した。
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