研究課題
・ MYB3R3-GFPおよびGFP-MYB3R4形質転換体を用いた免疫沈降実験から、それぞれのMYB3Rは共にE2FおよびE2Fと相互作用することが知られるRBR1を含むタンパク質複合体を形成していることが示唆された。この結果から、ヒトやショウジョウバエで知られるDREAM complexに対応するタンパク質複合体が植物に存在し、それらが多様な細胞周期関連遺伝子を制御しているものと考えられた。・ MYB3R3-GFPを用いた免疫沈降による複合体解析の結果、進化的に保存されたDREAM complexの構成因子に対応するシロイヌナズナのホモログが検出された。これらには、LIN54/Mip120, LIN9/Mip130に対応するシロイヌナズナのタンパク質(ALY2, ALY3, TCX5)などがあった。この複合体解析の精度を上げることで、未知の構成タンパク質を含む複合体の実体が同定されると期待される。・ in vitroにおいてタンパク質間相互作用を解析する新手法AlphaScreenを利用して、MYB3R3およびMYB3R4が、予想されるDREAM complexの構成因子と相互作用するかどうか解析した。興味深いことにin vitro translationに用いたWheat germ extract中でタンパク質複合体の再構成が起こっていると示す結果が得られた。今後、この再構成系を使って構成因子の特定、さらに未知の構成因子の同定を行うことができると期待される。・ ヒトやショウジョウバエのDREAM complexの構成因子LIN9/Mip130に相同な遺伝子は、シロイヌナズナに3個存在している(Aly1, 2および3)。これらの遺伝子の変異を組み合わせた多重変異体を作出し、表現型解析を行った。2つの遺伝子に変異を持つ2重変異体では植物の成長に大きな違いは見られなかった。一方、3重変異体は単離されず、多重変異体の胚発生の様子を観察した結果から、ALY1-3は機能重複しており、その機能は胚発生に必須であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
抑制型MYB3R(MYB3R3)および活性化型MYB3R(MYB3R4)の双方がタンパク質複合体を作っていること、それらがE2FやRBR1を含むDREAM complexに類似の複合体として存在していることを示すことができた。さらに、MYB3R3とMYB3R4はそれぞれことなるE2F分子種と複合体をつくっていることから、それらは別々の複合体として存在しており、葉の発生において異なるタイミングで発現することも示唆された。一方、免疫沈降物の質量分析により構成タンパク質の網羅的な同定を試み、予想されるタンパク質の一部は検出されたが、現在までに複合体全体の解明には至っていない。予想される構成因子の機能解析にも着手しており、ALY1-3については、その機能が胚発生に必須であることが示唆された。一方で、その他の候補タンパク質については、まだ始まったばかりであり、表現型解析と共に遺伝子発現に対する効果を調べる必要がある。さらにMYB3Rを含めた因子間の遺伝学的な相互作用について準備を進める必要がある。
① MYB3R-E2F超複合体の分子実体 Myb-E2F超複合体の構成因子を質量分析により解析する。GFP-MYB3R形質転換植物体を用いた実験では、タンパク質量が十分に得られないためか、複合体の全体を解明するには至らなかった。このため、培養細胞に同様のコンストラクトを導入して免疫沈降物の質量分析を試みる。②MYB3R-E2F超複合体の標的DNAへの結合 シロイヌナズナMYB3RおよびE2F, RBR1がin vivoにおいて結合している標的遺伝子を網羅的に同定する。GFPとの融合タンパク質として各因子を発現する形質転換体を用い、抗GFP抗体によるChIP-Seq解析を行う。③MYB3R-E2F超複合体の構成因子やDNAへの結合状態が発生や細胞周期中で、どのように変化するか、その動態を明らかにする。④MYB3R-E2F超複合体の各構成因子の機能解析 MYB3RおよびE2Fそれぞれの活性化型、抑制型のメンバーを欠く変異体を用いて、遺伝子発現の変化を網羅的に明らかにする。まずは芽生え全体を植物材料としてRNA-Seqを行い、トランスクリプトーム解析を行う。新奇構成因子についても変異体を取得し、同様に解析するとともに、E2F, MYB3R, RBR1の変異を組み合わせた多重変異体の作出を行う。⑤DNA結合を担う複合体構成因子 MYB3RおよびE2F(それぞれの活性化型、抑制型)とRBR1の変異が、複合体の標的DNAへの結合に影響を与えるかどうか解析する。また、新奇複合体構成因子(上述)についても変異体を取得し、同様の解析を行う。
抑制型MYB3R (MYB3R3)と活性化型MYB3R (MYB3R4)のほか、各E2F分子種およびRBR1についてGFP融合タンパク質を発現する植物を用いて免疫沈降、質量分析による複合体解析を行う予定であった。MYB3R3, E2FBおよびRBR1について芽生え全体から得られるタンパク質抽出液を用いて実験を行ったところ、予想される複合体構成因子を検出することはできたが、十分に濃縮されておらず他のタンパク質も同時に多数検出されることがわかった。このため、未知の複合体構成タンパク質を同定することが困難であり、まずはこの実験系を十分に改良する必要があると判断した。このため、複合体構成因子の結合実験、機能解析など次年度に行うこととした。
MYB3RやE2Fを含むタンパク質複合体が存在すること自体はすでに明らかにしている。次年度以降に、この複合体を高純度で精製するため、免疫沈降の条件、使用する植物材料について検討を行う。タンパク質複合体を十分に濃縮する方法を確立した後、次年度に個々の構成因子の同定、それらの機能解析、DNAとの結合状態の解析などを行っていく。
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