脂肪を蓄積する白色脂肪細胞が、脂肪を燃焼させる褐色様脂肪細胞に変換する仕組みがあることがわかってきた。褐色様脂肪細胞の量と肥満度は負に相関することから、「褐色化」の制御は肥満解消の切り札となる。また、間葉系幹細胞の脂肪細胞分化に「至適な細胞外マトリックスの硬さ」があることが示され大きな注目を集めている。肥満は、脂肪組織に炎症を引き起こし、炎症は細胞外マトリックスの分泌と架橋化を促進することで脂肪組織を「硬く」することが知られている。本研究は細胞外マトリックスの硬さが白色脂肪細胞の褐色化に与える影響とその仕組みを明らかにすることを目的としている。 ポリアクリルアミドを用いたゲル上で白色脂肪細胞と脂肪細胞の前駆細胞を培養し、アドレナリン刺激により褐色化を誘導した。その結果、硬い培養基板であるシャーレ上に比べ、軟らかいポリアクリルアミドゲル上で褐色脂肪細胞のマーカー遺伝子であるUCP1の発現が強く上昇した。しかし、硬さの異なるアクリルアミドゲル上で培養した細胞間では、ばらつきが大きくUCP1の発現に有意な差が見られなかった。このことから、比較的「硬さ」の違いが小さい環境では硬さは脂肪細胞の褐色化に影響を与えないが、「硬さ」の違いが大きければ褐色化に影響を与えることがわかった。
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