研究課題/領域番号 |
26660292
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
石川 孝博 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (60285385)
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研究分担者 |
秋廣 高志 島根大学, 生物資源科学部, 助教 (40508941)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アスコルビン酸 / シロイヌナズナ / 輸送機構 / 酵母発現ライブラリー |
研究実績の概要 |
植物のアスコルビン酸(ビタミンC)は最終的にミトコンドリア膜間スペースで生合成された後、葉緑体などの細胞内オルガネラに、また組織間ではソース葉から排出後転流により果実等シンク器官に輸送されることが知られているが、細胞内外におけるアスコルビン酸輸送機構は未解明の問題である。植物アスコルビン酸輸送機構の解決を本研究の目的とし、今年度はシロイヌナズナのアスコルビン酸欠乏変異体vtc2に対し変異原エチルメタンスルフォン酸処理を行い作製した変異体種子プールより、葉緑体アスコルビン酸レベルにより著しく影響を受けるクロロフィル蛍光パラメタ―のひとつ非光化学消光(NPQ)を指標にして、外部からのアスコルビン酸添加でもNPQ値が回復しない変異体をアスコルビン酸輸送変異体候補として数種類の株を単離した。得られた変異体候補株に対して、親株のvtc2変異体との戻し交配を進めた。またvtc2変異体以外にもT-DNA挿入によるシロイヌナズナvtc2遺伝子破壊株(vtc2-KO)にも着目し、vtc2変異体同様、定常栽培条件におけるNPQの低下とアスコルビン酸添加によるNPQの回復現象を確認し、新規アスコルビン酸輸送変異体探索のホストとして有用であることを確認した。 またイネの膜タンパク質約1,500遺伝子を個別にクローン化した後、酵母W303-1A株をホストに酵母発現ライブラリーを作製し、14C標識アスコルビン酸の取込み活性を指標にアスコルビン酸輸送体候補遺伝子の大規模探索を試みた。アスコルビン酸が最も安定化する培地条件を確立後、スクリーニングを試みたが年度末時点で目的の遺伝子単離には至っておらず、原因究明のために発現系の検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はシロイヌナズナのvtc2変異体にEMS変異原処理をした種子プールより、NPQを指標にしたアスコルビン酸輸送変異体候補株を複数取得し、原因遺伝子同定のための戻し交配を順調に進めている。またvtc2-KO株についても目的のアスコルビン酸輸送変異体単離のためのホストとして有用であることを示し、新規の輸送変異体単離のための準備も順調に進行している。一方、酵母発現ライブラリーを用いたアスコルビン酸輸送遺伝子の探索の項については、当初予定していた候補クローンの取得に至っておらず、予定していた計画をこなせていない。これらの点を総合的に勘案し、研究全般としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度得られたアスコルビン酸輸送変異体候補について、戻し交配株からラフマッピングを進めるとともに、次世代シーケンサによる原因遺伝子の同定を試みる。また本研究課題は、有用な変異体単離が研究の成否のすべてであることから、昨年度ホストとして使用したvtc2変異体以外にも、T-DNA挿入によるVTC2遺伝子破壊(vtc2-KO)株もホストとし、vtc2-KO株の変異原処理による新規アスコルビン酸輸送変異体の単離も進める。酵母発現ライブラリーからの包括的輸送変異体探索に関しては動物のアスコルビン酸輸送体SVCT1/2をポジティブコントロールに酵母の発現系によるアスコルビン酸取込み条件のさらなる最適化を図る。また今年度標的にしてきた還元型アスコルビン酸に加え、酸化型アスコルビン酸の輸送変異体も新規候補に加え探索を推進する。具体的には、動物で酸化型アスコルビン酸の輸送を担うことが報告されているヘキソース輸送体に主に着目し、シロイヌナズナおよびイネの相同遺伝子による酸化型アスコルビン酸輸送活性の検証を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
酵母発現ライブラリーを用いたアスコルビン酸輸送体探索において、当初候補クローン単離後、遺伝子の同定および組換え体や変異体による一連の機能解析を計画していた。しかし、年度末の時点で目的の候補クローンが得られていないため、予定していた必要経費の一部を次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
酵母発現ライブラリーより目的の候補クローンを得たのち、その解析に必要な遺伝子解析用酵素類およびプラスチックシャーレやマイクロチューブ等の消耗品費として使用する。
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