研究実績の概要 |
植物のアスコルビン酸は最終的にミトコンドリア内外膜間スペースで生合成された後、葉緑体などの細胞内オルガネラに、また組織間ではソース葉から排出後転流により果実等シンク器官に輸送されることが知られているが、細胞内外におけるアスコルビン酸輸送機構は未解明の問題である。植物アスコルビン酸輸送機構の解明を目的とし、今年度は昨年度に引続き、T-DNA挿入によるシロイヌナズナvtc2変異体に対し、EMS変異原処理を行い、取得したM2種子に対し、クロロフィル蛍光パラメーターの一つ非光化学消光(NPQ)を指標に、アスコルビン酸添加によりNPQ回復異常を示す変異体の探索を実施した。その結果少なくとも3種類の新奇アスコルビン酸輸送変異体候補株を取得した。PCRにより既知のアスコルビン酸輸送体(PHT4;4)およびnpq変異体の下人遺伝子(VDE1, PsbS)に異常がないことを確認した。またアスコルビン酸の還元力を利用した組織染色である銀染色により、得られた変異体候補のうち2株は親株のVTC2破壊株に比べ、アスコルビン酸添加によるプラスチドの銀の沈着度合いが低い傾向が観察された。以上の結果より、今回得られた3種類の変異体のうち、2種類の変異体は未知のアスコルビン酸輸送体遺伝子を原因とすることが期待された。
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