研究課題
イノラートとベンザインとの4連続反応によるトリプチセンの合成法を見出した。本反応は9位に水酸基、10位にアルキル基を有するトリプチセンを合成できる点で特徴的である。本合成の収率はベンザインの生成法に強く依存したため、詳細に実験条件の検討を行った。その結果、ジブロモベンゼンからのベンザインの生成では低収率にとどまったが、フルオロベンゼンを原料とするオルトリチオ化法で収率が向上した。特に3-フルオロアニソールを原料とした場合、位置選択的にトリプチセンが好収率で得られた。この生成物の結晶化にも成功しエックス線結晶解析で立体構造を明らかにすることができた。3つのメトキシ基が水酸基と同一面に集約されているため、これを単位構造とするハニカム構造が合成できれば高い機能性が期待できる。さらに、フローマイクロリアクターを用いたトリプチセンの合成も検討した。流速、温度、濃度などを精査した結果、ボリルトリフラートを原料とするベンザインの生成法を用いた場合、バッチ系よりも3倍ほど収率が向上した。系内でボーレート中間体を経ているため、イノラート以外の求核剤との接触が制限され収率の向上につながったと考えられる。トリメトキシトリプチセンの9位水酸基の変換反応を検討した。立体障害のため反応性が乏しかったが、塩化アセチルをニートで加えることによりアセチル化に成功した。また、まだ予備的な結果ではあるものの、ジフルオロアニソールを原料とするベンザインとイノラートの反応でトリプチセンの合成にも成功し、トリプチセンにアラインを生成する原料を合成することができた。以上のようにハニカム構造の単位構造であるトリプチセンの合成と、その縮合のための足場作りに成功した。
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