研究課題/領域番号 |
26670004
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐々木 茂貴 九州大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (10170672)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 酸化損傷塩基 / 活性酸素 / 活性窒素 / 8-オキソグアニン / 8-ニトログアニン / 8-チオグアニン / 選択的捕捉分子 |
研究実績の概要 |
DNAは生体内で定常的に活性酸素(ROS)や活性窒素(RNS)に曝され損傷を受け、2’- 8-oxo-dGや8-nitro-dGなどの損傷塩基を生成する。これらは、酸化ストレスや疾患リスクのマーカーとして簡便な検出法の開発が望まれている。一方ではROSやRNSはレドックスシグナル系を構成し、その結果8-thio-dGや8-halo-dGなど様々な8位酸化グアノシン体を生じる。そこで本研究では、8位酸化グアノシン体の認識構造の違い、さらには8位置換基の求核性や求電子性の違いを識別し共有結合的に捕捉する分子を開発し、複数の酸化ストレスマーカー構成比を容易に検出する手法への展開を目指す。 平成26年度は、phenoxazine骨格にurea型リンカー介して、共有結合的に捕捉するための反応基を導入した。8位ニトロ基置換の目的でプロパンチオール基以外の長さの種々のチオールを導入し、プロパンチオール基がもっとも高い効率を示すことを確認した。さらに効率向上のため、リンカー部分のコンフォーメーションを固定した分子を合成し、水系溶媒中で高い反応性を示す可能性を確認した。また、8位チオグアノシンを捕捉する目的では、リンカー末端に塩素脱離基を導入した分子を合成し、効率的に捕捉できることを確認した。 また、リン酸認識部としてphenoxazine骨格に直接サレン亜鉛錯体を結合したoxo-dG clampを合成し、8-oxo-GTPと選択的錯体を形成できることを確認した。サレン錯体以外にモノリン酸を認識するカチオンユニットの合成を開始し、鍵中間体の合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究計画では、2’-デオキシ-8-オキソグアノシン、8-ニトログアノシン、8-チオグアノシン、およびそれらのリン酸体を選択的に認識したり、共有結合的に捕捉する分子の開発を目指し、平成26年度は基礎的な成果を得るための計画を立案した。その結果、2’-デオキシ-8-オキソグアノシン3リン酸体を水中で検出する分子を決定することができ、論文発表の準備も整っている。また、8-ニトログアノシン捕捉分子については化学的性質を明らかにすることができ、国際誌に論文が掲載された。引き続き、機能を向上させた分子の開発も達成され、現在論文執筆中である。8-チオグアノシン捕捉分子も開発することができ、国際誌に掲載された。このように、当初の計画以上に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、開発したプローブ分子の水溶液中サンプルへの適用を検討する。 2’-デオキシ-8-オキソグアノシン3リン酸体を認識する分子は、予備的な検討から細胞内への移行性が確認されたので、細胞の酸化ストレス付加による2’-デオキシ-8-オキソグアノシン3リン酸体生成の検出を検討する。 8-ニトログアノシン捕捉分子は、水中で効率的な反応を示す分子構造を決定することができたので、リン酸認識部位を付加し、水中での8-ニトログアノシン環状モノリン酸体の捕捉を検討する。ニトログアノシンは捕捉分子の蛍光に対して強い消光作用を示し、捕捉反応によって蛍光共同は比較的に回復する。生体内での反応を検出するため、蛍光強度の変化による反応追跡の可能性を検討する。 8-チオグアノシン捕捉分子における課題は、捕捉反応により蛍光強度が増強するOFF-ON型分子への展開である。そのために、まず、8-チオグアノシン捕捉分子に蛍光消光性の脱離基を結合させ、蛍光消光した分子を開発する。さらに、チオグアノシンによってこの消光団を脱離する反応を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
支出は、消耗品費はほぼ予定どおりで、旅費の支出がやや超過となり、その他の執行が少なく、結果として本年度未執行額が533円となっている。学会出張が年度末となったため、未執行予算が生じることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度の未執行額は消耗品に使用し、平成27年度は計画にそって執行する予定である。
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