DNAは生体内で定常的に活性酸素(ROS)や活性窒素(RNS)に曝され損傷を受けている。2’-Deoxyguanosine (dG)から生じる 8-oxo-dGや8-nitro-dGは代表的な損傷塩基であり、強い変異原性を有しているため、酸化ストレスや疾患リスクのマーカーとして簡便な検出法の開発が望まれている。一方ではROSやRNSはレドックスシグナル系を構成し、その結果8-thio-dGや8-halo-dGなど様々な8位酸化グアノシン体を生じる。これらの生成比は疾患のレドックス異常を反映していることが示唆されている。そこで本研究では、8位酸化グアノシン体の認識構造の違い、さらには8位置換基の求核性や求電子性の違いを識別し共有結合的に捕捉する分子を開発し、複数の酸化ストレスマーカー構成比を容易に検出する手法への展開を目指した。 Phenoxazine骨格にurea型リンカーを結合することによって8位酸化グアノシン7位窒素への水素結合供与により安定な錯体を形成させ、共有結合的に捕捉するため、末端に反応基を導入する。すでにプロパンチオール基を導入していたが、反応性向上のため、種々のスペーサーを検討し、ベンジルチオールおよび1,3-ジオキサンスペーサーが高い反応性を有することを見出した。さらに、8-オキソグアノシントリリン酸体の検出のため、トリリン酸基結合部位としてサレン亜鉛錯体を結合したoxo-dG clampを合成した。引き続き2’-deoxyriboseの代わり直接アセチレンを結合した分子を合成し、短いスペーサーによるカチオン部を導入し、水中で8-オキソグアノシントリリン酸体の選択的な認識に成功した。水中の8-オキソグアノシンを検出するためシリカナノ粒子上にアセチレン結合phenoxazine体を用いて導入し、好感度で8-オキソグアノシンの選択的な検出に成功した。
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