本研究では、人工酵素によるC-H結合の選択的酸化を目指し、活性種の周りの空間を柔軟に構築するためにキラルイオン対の利用を計画した。錯体の安定性及び触媒活性が報告されているN5配位子との鉄やマンガン錯体を検討したが、キラルイオンの解離が遅いためか、触媒活性は著しく低下した。一方、N4型配位子にしたところ、中程度の収率ながらC-H酸化が進行することを確認した。また、触媒金属中心に基質を配位させる目的でカルボキシル基を有するアルカンを基質として適応したところ、反応はベンジル位選択的に進行し、有用性の高いラクトンを比較的良好な収率で得た。更に、中程度ながらエナンチオ選択性が誘起されることを見出した。
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