研究実績の概要 |
(S)-2-((1H-Benzo[d]imidazol-1-yl)methyl)-4-isopropyl-4,5-dihydrooxazoleに対してブロモメチルオキサゾリン1を作用させるとオキサゾリン環が開環したヒドロキシアミド体2が生成する。これにPBr3を反応させて生じたジブロモ体3にMS4A存在下、Ag2Oを作用させると、NHC-Ag(I)錯体3が生成する。錯体3とRuCl2(PPh3)3の反応では、NHC-RuCl2(PPh3)2(錯体4)が生成した。錯体3とPdCl2との反応では、NHC-PdCl2(錯体5)、錯体3とPtCl2/DMSOとの反応では、NHC-PtCl2(DMSO)(錯体6)が生成した。 錯体4および5は、Meerwein-Ponndorf-Verley還元の触媒となる可能性があるため、各種塩基存在下、iPrOH中でアセトフェノンの還元を試みたが、いずれの錯体も触媒能を示さず、還元反応は進行しなかった。 錯体6を2等量のAgBF4で処理してジカチオン性錯体7とし、7-tert-butyldiphenylsilyloxyhept-1-en-5-yn-4-olに作用させたところ、41% eeの1-tert-butyldiphenylsilyloxymethylbicyclo[3.1.0]hexan-3-oneが収率93%で得られ、錯体7がエンイン環化の不斉触媒として機能することを見出した。 ビナフチルの軸不斉を不斉源とした新規イミダゾリリデン型NHCを含むピンサー型配位子を設計した。その合成に関する情報を得るため、ビナフチルが縮環したイミダゾリリデン型NHC単座配位子の合成を試みた。その結果、光学活性BINOLから目的の配位子-Ag(I)錯体の合成に成功した。合成した配位子-AuCl錯体はAgNTf2と反応させてカチオン性錯体とするとエン-イン環化反応の不斉触媒として作用し、目的生成物が収率72%、90% eeで得られるケースを見出した。置換基として配位性の官能基を導入すればNHCを含むピンサー型配位子が合成できるため、さらなる展開を検討中である。
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