研究課題
胸腺内におけるT細胞の成熟について、核内IkappaBファミリー分子がどのような役割を担うのかについて、遺伝子欠損マウスを駆使して研究を遂行している。これまで、IkappaB-zetaを欠損するマウスにおいては、胸腺におけるT細胞の成熟に問題がある事が明らかとなってきており、その役割についての解析を行った。T細胞の成熟に重要なRag遺伝子(T細胞受容体のリアレンジメントに重要)のCD4-CD8-T細胞における発現については、野生型およびIkappaB-zeta欠損マウスにおいて、違いは認められなかった。また、胸腺内の様々なT細胞の画分におけるIkappaB-zetaの発現について、mRNAレベルで確認をおこなったが、顕著な違いは認められていない。現在、未成熟なCD4-CD8-T細胞の中の画分について、その割合や遺伝子発現パターンについての検討を行っている最中である。IkappaB-zetaと最も相同性の高いIkappaB-NSについては、胸腺内のT細胞において発現が認められるものの、T細胞そのものの成熟には関与していないという報告がある。申請者らも、すでにIkappaB-NS欠損マウスにおけるT細胞の成熟に異常がない事を見出しており、また最近になり、IkappaB-NSはIL-17産生T細胞の分化誘導に重要である事を見出した事から(PLOS One 2014 9;e110838)、IkappaB-NSについては、T細胞の成熟においては影響が少ないものの、胸腺内にて成熟するT細胞の分化機能に障害を与えている可能性が推察された。
3: やや遅れている
岐阜大学への異動にあたり、遺伝子改変マウスをクリーンナップしなければならず、野生型マウスとの交配および帝王切開による胎児の摘出を行った。このため、遺伝子マウスはヘテロの状態から再度交配をスタートさせなければならず、計画していた実験が進んでいない状況である。
現在は、遺伝子改変マウスを実験に使用できる準備が出来ている。平成26年度と平成27年度は、研究計画が異なるため、両者を同時進行する。平成27年度に計画していたIkappaB-NSの転写活性についての検討は既に遂行中である。NF-kBの強制発現により遺伝子発現が変動するELAM-1およびNGAL遺伝子の発現について、IkappaB-NSの強制発現を同時に促す事を試みた。すでに、IkappaB-zetaの強制発現においては、ELAM-1は発現が抑制されて、NGALは発現が上昇する事が知られているが、IkappaB-NSの強制発現では、遺伝子発現に変動は認められなかった。つまり、IkappaB-NSとIkappaB-zetaは、構造が似ているものの、その機能については別のものであり、標的遺伝子についてもオーバーラップしていない事が推察されたため、本年度はこれらの転写因子の標的遺伝子の割り出しを優先的に行う。それぞれの研究にて得られた知見をフィードバックするとともに、胸腺におけるT細胞の成熟を介した生体恒常性維持における役割などを深く理解する事に努める。
岐阜大学への異動に伴い遺伝子改変マウスのクリーンナップをしなければならず、予定していた研究計画の円滑な遂行に支障をきたしたため。
前年度に繰り越した研究費については、全額を物品費として使用する予定である。遺伝子改変マウスの維持費や生化学的な試薬の購入を予定している。
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