研究課題/領域番号 |
26670022
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村田 茂穂 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (20344070)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プロテアソーム / 創薬 / 神経変性疾患 |
研究実績の概要 |
真核細胞プロテアソームには、ユビキチン化タンパク質を分解する26Sプロテアソームと、タンパク質分解活性を通常発揮しない20Sコア粒子(CP)単体の2つの集団が存在する。後者の存在意義は不明であったが、ユビキチン非依存的に変性タンパク質を分解しうることが知られる。後者の集団のみを消失したマウスが神経変性をきたすことを我々は見いだしており、この潜在的活性を持つ20S CPを活性化できる化合物を確立できれば、変性タンパク質蓄積という共通した病理所見を示す神経変性疾患に対し新しい予防・治療法への道が開ける可能性があると考えた。本研究では、細胞内変性タンパク質の分解を促進しうる潜在性20S CPの活性化剤をスクリーニングにより探索し、20S CPの活性化機序及び生理的意義を明らかにするとともに、神経変性疾患治療の新基盤を作ることを目標としている。 まず20S CPをマウス肝臓から大量に純度高く精製する系を構築した。精製CPに対し、創薬オープンイノベーションセンター(現、創薬機構)の保有する約20万低分子化合物を用いて、CPをin vitroで活性化するものをスクリーニングし、約2000化合物を一次ヒットとして得た。さらに、確認スクリーニング、BSA非吸着性、容量依存性に基づき、20化合物に絞り込むことに成功した。 次に、これらの化合物が細胞内においても20S CPを活性化し、変性タンパク質の分解を促進するかを検討する目的で、筋萎縮性側索硬化症の原因となる変異SOD1、変異TDP-43、アルツハイマー病の原因となる変異Tauを恒常的に発現する細胞株を樹立することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
high-throughput screeningを順調に、極めて高いS/N比で完遂することができた。従って、一次ヒット約2000化合物がすべて信頼性高く20S CPを活性化すると考えられるが、優先的に解析を進める化合物を絞り込む目的で上述の作業を行った。いずれも再現性よく、強く20S CPをin vitroで活性化する作用を有しており、次のステップである細胞を用いたアッセイが大いに期待される。
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今後の研究の推進方策 |
1.変異SOD1/TDP-43/Tauを発現する細胞を用いて、候補化合物がこれらの分解をプロテアソーム依存的に促進するかを検討する。 2.1のヒット化合物について、構造活性相関を検討する。その情報を元に、有機化学の専門家と協力し、合成展開を行う。 3.1のヒット化合物と20S CPの共結晶構造解析を、プロテアソームのX線結晶構造解析の専門家と協力し実施する。この情報は、20S CPを活性化するメカニズムの理解、およびより最適な化合物を得るために重要な情報をもたらすと期待される。
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