研究課題
本研究は最近明らかにしたがん幹細胞表面マーカー候補である亜鉛トランスポーターZnT1とこれに対するモノクローナル抗体を利用して、がん幹細胞が細胞の分裂に伴って非対称的に誘導される様子を検出することにより、これまで追究されていなかったがん幹細胞発生を可視化することを試みることを目的としている。これまでに作成した複数のモノクローナル抗体のうち、2G1がフローサイトメトリーおよび細胞化学的な検出に適していることを明らかにした。引き続きZnT1強制発現CHO-K1細胞およびヒト乳がん細胞株を用いて、抗ZnT1モノクローナル抗体2G1の結合性を指標にZnT1を検出することで、がん幹細胞におけるこの分子の不均一な分布を検出できるかどうかを解明する事を目指した。フローサイトメトリーによっては、MCF7細胞を含む複数の乳がん細胞および大腸がん細胞において、既にがん幹細胞と密接に関係するサイドポピュレーションと2G1抗体の結合性が相関することを明らかにしたので、細胞染色法によって二次元培養において、細胞周期の異なる位置の細胞における2G1抗体結合部位の細胞内外における分布の違いを検出することを試みた。特に細胞培養条件や固定法の詳細な検討を行った。現在のところ、細胞による2G1抗体の結合性の違いがいかなる背景によるのか確定的な知見は得られていない。一方、ZnT1に蛍光タンパク質を結合したキメラタンパク質を発現させてこの分子の分布を解析する実験に着手した。また、ZnT1などの膜タンパク質の糖鎖の細胞種による違いを解析する方法を確立しつつある。
3: やや遅れている
がん幹細胞を、既に開発した抗ZnT1モノクローナル抗体の結合性だけを指標に同定することは容易でないことが判明しつつある。ZnT1と蛍光タンパク質とのキメラ分子を強制発現させることなど新たなを準備中であり、複数の実験を同時並行で進めることが必要になっている。
ZnT1のmRNA、タンパク質、タンパク質のグライコフォームの発現レベルや細胞内外における分布などが培養条件や細胞周期などによりいかなる影響を受けるかを検討していく予定である。一方、ZnT1と蛍光タンパク質GFPとのキメラ分子を強制発現させ、その細胞内外における分布を解析する予定である。
これまでに得られた成果を勘案し、当初から提案内容に述べられていた二つの研究方法を同時並行で進めることに決定し、開始したため、予定より長い期間を要することになった。
研究材料や消耗品の購入に関して内容に変更はなく、全体としての進捗状況を勘案しての支出計画に基づいて使用する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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