研究課題
本年度はがん細胞におけるZnT1発現と悪性挙動との関係を追求した。研究開始時点では公開されていなかったヒト臓器ごとの遺伝子発現データが公開され、それによればZnT1の発現は極めてユビキタスであった。がん組織内における発現は、乳がん、肝細胞がん、子宮体がんで比較的高い症例があり、大腸がん、非小細胞肺がん、前立腺がんでは比較的低かった。しかし腫瘍組織内における不均一性はいずれのがんでも見られない。そこで、乳がん、肝細胞がん、子宮体がんにおける発現レベルと生存率の関係に興味が持たれた。乳がんではZnT1発現レベルが高い症例(約30%)では生存率が高いが統計的有意差はなく(p = 0.1)、肝細胞がんでも発現レベルの高い症例(約37%)で生存率が高く、その差は統計的に有意であった。子宮体癌の解析データは今の所公開されていない。大腸がんでも発現レベルの高い症例(約78%)で生存率が高かった(p = 0.07)。一方、非小細胞肺がんではZnT1高発現グループ(約53%)で生存率が低く(p = 0.002)、前立腺がんでもZnT1発現の高い症例(約68%)で生存率が低かった(p = 0.05)。別のデータベースに基づく解析では、胃がんでは高発現群で生存率が高く、卵巣がんでは高発現群と低発現群との間に生存率に差がなかった。これらの結果から、ZnT1を治療抵抗性に関係するがん幹細胞のマーカーとして解析を進めることは有効でないと判断した。作製した抗体がこの分子の発現解析や機能解析に使用できる可能性をさらに追求するため、ZnT1の発現と細胞の亜鉛抵抗性、さらにそれに対するmAb 2G1の作用について追求した。HEK293細胞にZnT1を強制発現させると亜鉛に対する抵抗性を生じることが明らかになった。
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