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2014 年度 実施状況報告書

遺伝子組み換え常在細菌を利用した動物に対する成長ホルモン供給法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 26670025
研究機関東京大学

研究代表者

垣内 力  東京大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (60420238)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワードロイヤルゼリー / 昆虫 / 体サイズ
研究実績の概要

本研究は、動物から分離した常在細菌に成長ホルモン遺伝子を組み込み、動物に再定着させて、成長ホルモンを持続的に動物体内に供給させる方法の確立を目指している。本方法においては、経口投与により動物の体サイズを増加させる生理活性物質が必要である。本年度は、経口投与により昆虫の体サイズを増加させる物質の探索を行った。
ミツバチは幼虫時にロイヤルゼリーを経口摂取すると、体サイズが増加し、女王化することが知られている。ロイヤルゼリーが他の昆虫の体サイズを増加させるかについて検討を行った。完全変態昆虫の鱗翅目に属するカイコガの幼虫にロイヤルゼリーを経口投与すると、メスの蛹と成虫のサイズが増加した。一方、幼虫、並びに、オスの蛹と成虫のサイズ増加は観察されなかった。ロイヤルゼリーを投与したカイコガのメス成虫の腹部は通常のメス成虫に比べて肥大化していた。不完全変態昆虫の直翅目に属するフタホシコオロギにロイヤルゼリーを経口投与すると、オスとメスの両者において、幼虫と成虫のサイズが増加した。ロイヤルゼリーを投与してもコオロギのメスの腹部の肥大は観察されず、ロイヤルゼリーを投与したオスとメスの成虫の体サイズは全体的に増加した。ロイヤルゼリーに含まれる3大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)量を含む餌を投与してもコオロギの体サイズは増加しなかった。
以上の結果は、ロイヤルゼリーの体サイズ増加効果が完全変態昆虫と不完全変態昆虫の間で保存されていること、ロイヤルゼリーの体サイズ増加効果は3大栄養素の量の違いでは説明されないことを示唆している(投稿中)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

おおむね順調に進展している
概ね当初の計画通りの研究成果が得られていると判断している。
1) 経口投与により動物の体サイズを増加させる物質について:経口投与により動物の体サイズを大きくする生理活性物質は、国内外でほとんど報告されていない。本研究では、コオロギとカイコガに対して、ミツバチのロイヤルゼリーの経口投与が体サイズを増加させることを明らかにした。また、コオロギに対する体サイズの増加効果は、ロイヤルゼリーを添加した餌の3大栄養素量の増加では説明されないことが示唆された。以上の結果は、ロイヤルゼリー中の生理活性物質が昆虫に保存された体サイズを決定するシステムに対して働きかけ、体サイズを増加させることを示唆している。したがって、ロイヤルゼリー中の体サイズを増加させる生理活性物質を常在細菌に生産させれば、動物の体サイズを増加させることが可能だと期待される。
2) 昆虫の常在細菌について:本研究は、遺伝子組み換えをした常在細菌を昆虫に定着させることを目標としているため、昆虫に定着している常在細菌の数と質の変化が昆虫に対して及ぼす影響を理解する必要がある。昆虫の常在細菌の生理的役割を明らかにするため、クワガタの菌嚢に常在する細菌の分離同定を行った。その結果、多くの分離株が抗菌物質を生産していることが明らかになった (Drug Discov Therに発表)。常在細菌による抗菌物質生産は、宿主である昆虫の生体防御の一端を担う可能性が考えられ、興味深い。コオロギの常在細菌分離とその生理的役割の検討については、平成27年度に持ち越され、実施予定である。

今後の研究の推進方策

1) ロイヤルゼリー中の体サイズ増加物質について:平成26年度は、ロイヤルゼリー中の主要タンパク質がコオロギの体サイズ増加効果を担うと考え、リコンビナントタンパク質の活性を検討したところ、その活性は見出されなかった。この結果は、ロイヤルゼリー中の主要タンパク質の活性を保った状態で精製をできていない可能性と主要タンパク質以外のロイヤルゼリー中の成分がコオロギの体サイズを増加させる可能性の2つを示唆している。この結果をふまえ、本年度はコオロギの体サイズ増加を指標に、ロイヤルゼリー中の体サイズ増加活性を担う物質を同定する予定である。
2) コオロギの常在細菌について:コオロギの腸管内に生息する培養可能な常在細菌について、分離同定を行い、コオロギの成長や生殖に及ぼす影響を検討する予定である。これらの分離同定された細菌の中から、遺伝子組み換えとタンパク質発現に適した細菌種を探索する予定である。

次年度使用額が生じた理由

当初、ロイヤルゼリー中の主要タンパク質が体サイズ増大効果があることを予想しており、このタンパク質の活性が確認された場合に、常在細菌の全ゲノム解析と遺伝子組み換えに対して助成金を利用する予定であった。予想に反し、主要タンパク質に活性が見出せていないため、これらの計画については、次年度に持ち越している。

次年度使用額の使用計画

主要タンパク質以外に活性がある可能性も考慮し、ロイヤルゼリーから体サイズ増加活性を指標として精製を行う。精製された物質がタンパク質であった場合には、リコンビナントタンパク質を調製し、体サイズ増加活性を示すかを検討する。また、コオロギの常在細菌について、形質転換法を確立する。タンパク質を精製するための生化学試薬、形質転換のための遺伝子工学試薬、コオロギ常在細菌を全ゲノム解析について、研究費を使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] Antibiotic-producing bacteria from stag beetle mycangia.2015

    • 著者名/発表者名
      Miyashita A, Hirai Y, Sekimizu K, Kaito C
    • 雑誌名

      Drug Discov Ther.

      巻: 9 ページ: 33-37.

    • DOI

      10.5582/ddt.2015.01000.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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