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2014 年度 実施状況報告書

骨形成における小胞体カウンターイオンチャネルの機能的役割

研究課題

研究課題/領域番号 26670028
研究機関国立医薬品食品衛生研究所

研究代表者

山崎 大樹  国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部, 主任研究官 (40467428)

研究分担者 駒崎 伸二  埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (80129155)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワードTRICチャネル / 骨芽細胞 / 破骨細胞 / 骨形成不全症
研究実績の概要

本研究では、サウジアラビアおよびイスラエルの家系にてTMEM38B (TRIC-B)がヒト骨形成不全症の原因遺伝子として新たに同定されたことから、骨形成不全症の発症原因と考えられる変異型ヒトTRIC-Bタンパク質によるTRIC-B機能低下の原因を生化学的および電気生理学的アプローチにより解明を試みた。まず、コムギ無細胞発現系により変異型ヒトTRIC-Bタンパク質を精製し、化学架橋試薬による多量体形成能を検討した。その結果、変異型であっても正常型と同様に3量体形成能を有することが明らかとなった。現在は、変異型ヒトTRIC-Bタンパク質を人工脂質二重膜へ再構成し、電気生理学的解析を実施すべく、精製条件の検討を行っているところである。
また、呼吸不全により新生致死を示すTRIC-B欠損マウスにおいても骨形成不全症の表現型が肋骨や大腿骨にて観察されたことから、骨形成不全症の原因細胞として可能性のある骨芽細胞または破骨細胞の関与を明らかにしつつ、原因細胞を単離・培養しヒトでのTRIC-B機能低下あるいはマウスにおけるTRIC-B欠損による骨形成不全症の発症メカニズムを明らかにすることを試みた。胎生17.5日からP0までのマウス大腿骨に対してアリザリンレッド染色およびALP染色、TRAP染色など詳細な組織学的解析を行ったところ、胎生期よりすでに骨形成の遅延が生じており、かつTRAP陽性細胞の海綿骨における分布もTRIC-B欠損マウスにて異常であることが示された。従って、骨芽細胞と破骨細胞のいずれの細胞においても何らかの異常を有している可能性が考えられたため、それぞれの細胞を単離・培養し、遺伝子発現や細胞機能について検討した。さらに破骨細胞においては、単離・培養を開始したところであり、細胞数・細胞あたりの核数・大きさ等の定量や、破骨細胞にてすでに観察されることが明らかとなっているカルシウムオシレーションについても検討することを予定している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

変異型ヒトTRIC-Bタンパク質の電気生理学的解析は精製したタンパク質の精製度が不十分であるため電気生理学的解析に至っていない状況であるが、骨形成不全症発症メカニズムの解明については様々な染色による詳細な組織学的解析をすでに終了しており、骨芽細胞および破骨細胞のいずれの細胞においても異常が観察されている。これを受けて、2種類の細胞の単離・培養系を立ち上げ、まずはそれぞれ単独での遺伝子発現や細胞機能の解析を行っている。TRIC-B欠損骨芽細胞においてERストレスマーカー遺伝子の発現上昇は、大腿骨の電子顕微鏡観察により膨潤化した小胞体が多数観察されたことからも予測できたが、何故小胞体が膨潤化するのかは現在のところ不明である。これを明らかにするため、マイクロアレイを実施中である。また、破骨細胞の単離・培養では、きちんとした結果はまだ出てないが、定量的な解析を行い野生型とTRIC-B欠損細胞との違いを明らかにすることを目指している。このように当初研究実施計画として予定した進捗状況であり、組織学的解析については埼玉医科大学の駒崎先生を分担研究者として実施していただいたが、平成26年度で解析が終了したことから分担研究者の変更を行った。
以上より、おおむね順調に進行していると言える。

今後の研究の推進方策

変異型ヒトTRIC-Bタンパク質を人工脂質二重膜へ再構成し電気生理学的解析を実施すべく、精製条件の検討を行っており、ウェスタンブロット等でかなりの精製度であっても人工脂質二重膜へ再構成するとクロライドチャネルの混入が避けられず、TRIC-Bチャネルのみの電流を測定できる状態には至っていない。平成27年度は様々な条件を試し、TRIC-Bの電流のみを測定できる条件をできるだけ早く見出す予定である。
骨形成不全症発症メカニズムの解明について平成27年度は、平成26年度に引き続き各細胞の単離・培養系において細胞機能の解析を行う。骨芽細胞においてはERストレスマーカーおよびIL-6遺伝子の発現上昇の原因の解明を目指すとともに、骨形成および骨芽細胞機能として重要なコラーゲンの産生・分泌、さらにはTRIC-Bの機能として重要な細胞内カルシウム制御についての検討を行う。また、破骨細胞についてもTRAP染色や、象牙質切片上でのピット形成を評価することで破骨細胞の骨吸収機能を評価する。さらにはすでに破骨細胞にて観察されることが報告されているカルシウムオシレーションについても定量的な解析を行い、野生型とTRIC-B欠損細胞との差異を見出し、最終的には骨芽細胞と破骨細胞の複合的な異常により骨形成異常が生じているかどうかを明らかにする。
変異型ヒトTRIC-Bタンパク質の精製条件の検討についても並行して進め、電気生理学的解析を行うことを目指す。

次年度使用額が生じた理由

平成26年度の研究実施内容としては、分担研究者であった埼玉医科大学の駒崎先生や共同研究を実施している先生方に結果を出してもらったものがほとんどであり、申請者の所属研究室で実施したものはほとんど無かった。そのため、次年度使用額が大きく生じたものと考えられる。また、申請者自身が1月より所属機関が変更となり、変更直前の12月は予算の移動のため、変更直後からしばらくは新規所属機関での予算執行システムの理解不足により予算執行が困難であった。

次年度使用額の使用計画

平成27年度には、2種類の細胞単離・培養が本格的に始まり、細胞機能アッセイやカルシウムイメージング、または網羅的マイクロアレイ解析の実施を予定しているため、細胞培養関連の消耗品、イメージングのための色素の購入やマイクロアレイの委託費に充てる計画である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Contribution of calumin to embryogenesis through participation in the endoplasmic reticulum-associated degradation activity.2014

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto S, Yamazaki T, Komazaki S, Yamashita T, Osaki M, Matsubayashi M, Kidoya H, Takakura N, Yamazaki D, Kakizawa S.
    • 雑誌名

      Developmental Biology

      巻: 393 ページ: 33-43

    • DOI

      10.1016/j.ydbio.2014.06.024.

    • 査読あり
  • [学会発表] 小胞体カウンターイオンチャネルによる細胞内カルシウム制御2015

    • 著者名/発表者名
      山崎大樹、竹島浩
    • 学会等名
      第88回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2015-03-18 – 2015-03-20
  • [学会発表] 血圧調節におけるカウンターイオンチャネルの機能的役割の解明2014

    • 著者名/発表者名
      山崎大樹、竹島浩
    • 学会等名
      心血管膜輸送研究会2014
    • 発表場所
      岡崎・生理学研究所
    • 年月日
      2014-09-04 – 2014-09-05
  • [学会発表] TRICチャネルによる小胞体Ca2+分布2014

    • 著者名/発表者名
      山崎大樹、陶晟辰、竹島浩
    • 学会等名
      第56回日本平滑筋学会総会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2014-08-06 – 2014-08-08

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公開日: 2016-05-27  

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