研究課題
脳室周囲器官の脈絡叢では、上皮細胞層が血管を包み血液と脳脊髄液を隔離する。脊髄損傷では、末梢血由来のM1とM2のマクロファージが損傷部位に順次出現するが、M1は脊髄の血管から、M2は脈絡叢の血管から漏出し損傷部に集積する。こうしたM2集積は脊髄修復に必須であり、M2への分化は脈絡叢の漏出時に起こる。しかし、脈絡叢でどの細胞がM2配向性を決めるのかは不明である。研究代表者は、これまでに、脳内マスト細胞が脈絡間質に存在し、12-リポキシゲナーゼ(12-lox)など特徴的な遺伝子を発現することを見出していた。12-loxはリゾルビンなどの抗炎症性脂質メディエーターを産生することから、本研究では、脈絡叢マスト細胞は、12-loxの代謝産物に依存して、M2マクロファージ配向性の局所環境を規定するのではないかと仮説を立てた。本研究の目的は、脈絡層マスト細胞がM2分化と脊髄修復に関与するか調べるとともに、脈絡叢でマスト細胞がM2配向性を示す分子機構を明らかにすることである。これまでの研究成果を以下に示す。1)マスト細胞欠損マウスでは、脊髄損傷修復に差違が生じ、これはM2マクロファージ集積と相関した。2)脈絡叢マスト細胞での12-lox発現レベルは脊髄損傷の進行に伴って変化した。3)現在、脳内の脂質メディエーターを質量分析機を用いて網羅的に解析し、マスト細胞依存的に産生され、かつM2マクロファージ配向的に脊髄損傷の治癒促進作用を示す脂質候補分子の同定を進めている。
4: 遅れている
平成28年の熊本地震により、4月から9月頃までマイクロアレイ等の共通機器を稼働することができず、検証実験の遂行が不可能であったため。
共通機器については、28年10月頃より修理や予算措置により回復したため、それ以降は細胞ベースの実験を再開でき、一定の成果をえた。そこで、研究期間を1年延長し、マウス個体を用いた実験を行い、仮説を検証する。
平成28年の熊本地震により、4月から9月頃までセルソーターやマイクロアレイ等の共通機器を稼働することができず、期間内に仮説検証実験を行うことが出来なかったため。
共通機器を含む研究環境が回復したため、研究期間を1年延長し、マウス個体を用いた実験を行い、仮説を検証する。
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