本研究では、標的遺伝子破壊(ジーンターゲティング)効率を制御するヒト細胞中の因子をハイスループットに探索・解析するとともに、得られた成果を普遍的なゲノム改変技術に応用していくことを目標として研究を行った。最も重要な成果はシチジンデアミナーゼの一つであるAPOBEC3Gの機能の一端を明らかにしたことである。すなわち、非相同末端連結(NHEJ)が働かなくなった細胞株においてAPOBEC3G遺伝子を破壊すると、ゲノム上での相同組換え頻度が上昇するだけでなく、標的遺伝子破壊効率が著しく上昇することが明らかとなった。一方、遺伝子導入条件についてもさまざまな検討を加い、人工ヌクレアーゼを使用することなく、ヒトiPS細胞においてパーセントオーダーで標的遺伝子破壊を行うことが可能になった。以上の成果は、ヒト細胞において効率的にゲノム改変を行うための簡便な手法の確立に直結する。
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