研究実績の概要 |
コンドロイチン硫酸の欠損胚(GlcAT-1KO マウス由来)は、多核割球が形成され致死に至る。また、加齢に伴うコンドロイチン硫酸の減少は、変形性関節症などの加齢疾患の原因となる。本研究では、加齢による卵巣のコンドロイチン硫酸の減少が多核割球形成(不妊)の原因となるという仮説を検証している。 加齢マウス(12ヶ月齢)及び若齢マウス(3ヶ月齢)の卵巣組織におけるコンドロイチン硫酸量を定量すると、卵巣のコンドロイチン硫酸は加齢に伴って減少していた。コンドロイチン硫酸鎖に対する抗体を用いた組織化学的解析から、マウスの卵巣では、卵細胞や顆粒膜細胞でコンドロイチン硫酸が強く発現していることが判明した。また、加齢マウスでは若齢マウスと比較して、コンドロイチン硫酸鎖に対する抗体の反応性が卵細胞や顆粒膜細胞で顕著に減少していたことから、加齢に伴って卵巣のコンドロイチン硫酸が減少することが明らかとなった。 そこで、加齢によるコンドロイチン硫酸の減少の原因がコアタンパク質の減少によるのではないかと考え、主に卵巣組織に発現しているコンドロイチン硫酸プロテオグリカンとして知られているBamacan, Versican, Decorinの発現量を解析したが、有意な差は認められなかった。次に、コンドロイチン硫酸鎖を合成する酵素である、コンドロイチン合成酵素(ChSy-1, -2, -3)やコンドロイチン重合化因子(ChPF)、コンドロイチンN-アセチルガラクトサミン転移酵素(ChGn-1, -2)の発現量を解析したが、加齢に伴った変化は見られなかった。しかし、コンドロイチン硫酸鎖の結合領域の合成開始に係るキシロースをセリン残基に転移する酵素(XylT-1, -2)について解析したところ、XylT-2の遺伝子発現量に有意な差は見られなかったが、XylT-1では加齢マウスで発現量が顕著に低下していた。
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