研究課題
コンドロイチン硫酸鎖の欠損胚(GlcAT-1KO マウス由来)は、多核割球が形成され致死に至る。また、加齢に伴うコンドロイチン硫酸鎖の減少は、変形性関節症などの加齢疾患の原因となる。本研究では、加齢による卵巣のコンドロイチン硫酸鎖の減少が多核割球形成(不妊)の原因となるという仮説を検証している。初年度は、マウス卵巣において加齢に伴いコンドロイチン硫酸鎖の減少が生じることを明らかにした。卵胞内の細胞外基質にはヒアルロン酸やコラーゲンと共にコンドロイチン硫酸プロテオグリカンが多く含まれている。しかしながら、卵胞成熟過程におけるコンドロイチン硫酸鎖の機能は不明である。そこで本年度は、卵胞の成熟過程に着目した。GlcAT-1 ヘテロ変異マウスから過排卵処理により得られた2細胞期胚を採取し24時間培養した後PCR法を用い着床前胚の遺伝子型判定を行ったところ、過排卵処理によってヘテロ変異体の着床前胚の数が野生型のものに比べ著しく減少することが明らかとなった(ホモ変異体の多くは多核割球が形成され致死に至る)。このことは、卵巣内においてGlcAT-1欠損によってコンドロイチン硫酸鎖が減少したことが排卵に影響を与えた事を示唆している。事実、卵巣のコンドロイチン硫酸鎖の二糖組成解析を行ったところ、野生型に比較してGlcAT-1 ヘテロ変異マウスでは約半分程度にまでコンドロイチン硫酸鎖が減少していた。さらに、過排卵処理後の卵巣において実際に排卵されなかった卵胞の数をカウントすることで排卵に与える影響を調べたところ、野生型に比較してGlcAT-1 ヘテロ変異マウスの卵巣では、胞状卵胞の数が増加し、排卵前胞状卵胞は減少傾向を示したが、一次卵胞及び二次卵胞の数に差は認められなかった。以上のことから、コンドロイチン硫酸鎖の減少は、卵胞の成熟過程の最終段階である胞状卵胞から排卵前胞状卵胞への進行を停滞させる可能性が示唆された。
3: やや遅れている
本年度は、コンドロイチン硫酸鎖の減少が卵胞の成熟過程の最終段階に影響を与える可能性を示す事ができたが、研究代表者の所属する大学の実験動物施設の全面的な改装工事が行われたため、本研究で必要なGlcAT-1 ヘテロ変異マウスの飼育が十分にできず、研究遂行に支障がでてしまい、その機構に関しては明らかに出来なかったため。
実験動物施設の全面的な改装工事も終了したので、今後は卵胞の成熟過程の最終段階にコンドロイチン硫酸鎖の減少がどのように関与しているのかを明らかにしていきたい。
次年度使用額が生じた理由は、研究代表者の所属する大学の実験動物施設の全面的な改装工事が行われたため、重要な遺伝子組換えマウスの飼育が十分にできず、研究遂行に支障がでたため。
改修工事も終了したので、次年度は概ね順調に遂行できるものと考えている。
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