研究課題
昨年度は、コンドロイチン硫酸鎖の減少が卵胞の成熟過程の最終段階である胞状卵胞から排卵前胞状卵胞への進行を停滞させることを明らかにした。卵巣は顆粒膜細胞が増加することで成熟する。顆粒膜細胞では、アンドロゲンがアロマターゼ(Cyp19)の働きによりエストロゲンとなり、成熟卵胞から分泌されるエストロゲンの増加により子宮内膜が肥厚する。Cyp19は、卵胞刺激ホルモン(FSH)とインスリン様成長因子(IGF)のシグナルにより発現が誘導される。そこで本年度は、コンドロイチン硫酸鎖の減少が顆粒膜細胞によるエストロゲンの生合成に及ぼす影響を調べた。4週齢の野生型マウスおよびコンドロイチン硫酸の合成が減少しているマウスに性腺刺激ホルモンを投与したのち、卵巣を摘出し、顆粒膜細胞を単離した。得られたそれぞれの顆粒膜細胞を、FSHのみ、IGFのみ、および両方の存在下で培養し、RNA抽出後Cyp19の遺伝子発現量をリアルタイムPCR法によって解析した。コンドロイチン硫酸の合成が減少しているマウスでは野生型マウスと比べ、FSHのみの刺激やIGFのみの刺激によっては、Cyp19の遺伝子発現量に変化は見られなかった。しかしながら、FSH及びIGFを両方添加した場合においては有意にCyp19の発現量が減少していた。以上のことから、コンドロイチン硫酸鎖の減少が顆粒膜細胞活性化時のエストロゲンの生合成に負の影響を及ぼすことが示唆され、加齢によるコンドロイチン硫酸鎖の減少が卵胞の成熟に対し抑制的に働く可能性が示唆された。
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J. Biol. Chem.
巻: 291 (44) ページ: 23294-23304
10.1074/jbc.M116.757328
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