研究課題/領域番号 |
26670034
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研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
田上 昭人 独立行政法人国立成育医療研究センター, 薬剤治療研究部, 部長 (60301800)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | miRNAホルモン / 下垂体 / 内分泌 |
研究実績の概要 |
本研究では、エクソソーム封入分泌型miRNAが新規内分泌因子として臓器間を伝播し、遠隔臓器の機能を制御する“miRNAホルモン”として作用する可能性を考え、下垂体での分泌型miRNAの同定とその分泌・標的器官への作用を検討する事を目的とした。本年度は下垂体成長ホルモン(GH)産生を制御するmiRNAの同定と機能解析を試みた。GH産生を制御するmiRNAの同定を行うため、下垂体特異的転写因子であり、GH産生細胞、プロラクチン(PRL)産生細胞および甲状腺刺激ホルモン(TSH)産生細胞の分化を規定するPit1を発現しGHを産生しないMtT/E細胞とGHを産生するMtT/S細胞におけるmiRNA発現プロファイルを比較し、MtT/S細胞において発現が高い複数のmiRNAを同定した。これらmiRNAをMtT/E細胞へ強制発現させ、GH産生を制御するmiRNAとしてmiR-200cを同定した。miR-200cはGH遺伝子発現を抑制すると考えられる転写抑制因子Zeb1を標的とし、MtT/E細胞においても、miR-200cの強制発現によりZeb1発現が低下した。一方、GH産生細胞特異的に成熟miRNA合成を阻害したコンディショナルノックアウトマウス(GH-cre:Dgcr8f/fマウス)は、野生型マウス(Dgcr8f/fマウス)に比べ低体重を示し、下垂体の矮小化を呈した。加えて、GH-cre:Dgcr8f/fマウス血中において野生型マウスと比べ発現が変動している複数のmiRNAを同定した。これらの結果から、miRNAはGH産生を制御し、個体の成長に重要な役割を有することが示唆され、またGH産生細胞に由来するmiRNAが血中に存在する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の本研究により、GH産生を制御しているmiRNAとしてmiRNA-200cを同定した。また、GH産生細胞に由来すると考えられるmiRNAが血中に複数存在している可能性を明らかにした。これら知見は本研究が提唱するるmiRNAホルモンの概念を示す結果であり、本知見を基に次年度の研究を発展させることにより、当初の目的達成に近づくものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の知見を基に、27年度においては本研究計画に掲げるモデルマウスを用いた検討も精力的に進め、in vitro/in vivoの両面からmiRNAホルモンの概念を証明すべく、研究を展開していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画に比べ、人件費の計上があったものの、物品費並びに旅費の支出が下回ったため、次年度使用額が生じた。ただし、本研究はおおむね順調に進捗しており、全体的な執行状況に照らして次年度使用額が生じたために、研究の進捗が滞っているわけではない。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度においても当初の使用計画に準じて次年度使用額を物品費あるいは旅費として使用することにより、当該研究計画が引き続き順調に進捗すると考えている。
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