研究課題/領域番号 |
26670044
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
東田 千尋 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 准教授 (10272931)
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研究分担者 |
紺野 勝弘 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 客員教授 (40215471)
数馬 恒平 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 客員助教 (70552446)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脊髄損傷 / マイクログリア / 骨格筋細胞 / 軸索 / 運動ニューロン |
研究実績の概要 |
本研究では、慢性期脊髄損傷に対する画期的治療薬の開発と、その分子メカニズムの解明を目的とする。ポイントは、機能回復が困難な複数の理由をそれぞれ解決する薬物を合わせたカクテル療法を目指す点にある。本年度は以下の成果を得た。 a)マイクログリアからの軸索伸展因子放出を活性化する薬物: 生後2日後のマウス大脳皮質から初代培養マイクログリアを単離培養し80種類の生薬エキスを処置し、conditioned mediumを取った。それらを別途初代培養した大脳皮質神経細胞に処置した。連翹水エキスを処置したマイクログリアconditioned mediumに、強い軸索伸展活性があることを見出した。b)運動ニューロンと骨格筋組織のシナプス結合を促進する薬物: マウス胎児後肢から骨格筋細胞を初代培養し、125種類の生薬エキスを処置し、conditioned mediumを取った。それらをマウス大脳皮質神経細胞に処置し軸索伸展活性を検討したところ、肉じゅう蓉水エキスに、骨格筋細胞からの軸索伸展因子放出活性があることを突き止め、放出される軸索伸展因子X(非公開)を同定し、それが脊髄の運動ニューロンに対しても軸索伸展作用を示すことを確認した。また、脊髄損傷マウス受傷後慢性期に入ってから、後肢に肉じゅう蓉水エキスを注射すると、運動機能が改善することを見出した。肉じゅう蓉水エキス中の活性成分Y(非公開)も見出した。c)CSPG上でも皮質脊髄路や介在ニューロンの軸索伸展を促す薬物: 昨年度の取組みで、軸索伸展阻害分子のCSPGをコーティングした培養皿上でも軸索伸展活性を有する生薬として苦参を見出し、その中の活性化合物としてmatrineを同定した。今年度は、matrineのシグナリングを明らかにする目的でmatrineの結合タンパク質を探索し同定に成功した(非公開)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、3年度の中で、下記の順番で実施する計画を立てて始まった。1) 運動を制御する、脳 ⇒ 脊髄 ⇒ 筋肉 リレーションすべてのポイントでの軸索伸展を飛躍的に促す新規化合物の発見、2) 受傷後慢性期の軸索伸展を阻んでいる環境要因を変える化合物の発見、3) 運動を制御する、脳⇒脊髄⇒筋肉 リレーションすべてのポイントでの機能向上を実現するカクテル療法の構築、4) 活性化合物の分子機序の解析
当初の計画では平成26年度には1)の実験を、平成27年度には2)の実験を、平成28年度には4)と3)を実施することを予定していた。実際には平成26年度には1) 2)に関する研究が進み、平成27年度には1)2)4)に関する研究がさらに進んだ。よって当初の計画以上に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
①平成27年度には、マイクログリアからの軸索伸展因子放出を活性化する活性化合物の同定を完了させる。またこのマイクログリアがどのようなフェノタイプにものなのか(M1、M2、それ以外)を既知のマイクログリアサブタイプマーカーの発現の有無から解析する。 ②肉じゅう蓉水エキス中の活性成分Yにより、骨格筋細胞に生じる変化と骨格筋からの軸索伸展因子Xの放出との関連を解析するとともに、その際に関わる細胞内シグナルを解析する。 ③CSPG上でも皮質脊髄路や介在ニューロンの軸索伸展を促す活性成分matrineの軸索伸展メカニズムをさらに詳細に解明する。 ④上記①②③で見出した活性生薬をカクテルにして、脊髄損傷慢性期マウスに投与し、運動機能改善効果を検討する。
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