研究実績の概要 |
放線菌および糸状菌の培養液に等量のエタノールを加えて作成した抽出液を用いてジアミノピメリン酸 (DAP) 合成経路を標的とした抗結核菌作用を持つ物質の探索を行った。放線菌抽出液、糸状菌抽出液、化合物、計約9600サンプルについてディスクアッセイを行った。5種の菌 (Mycobacterium smegmatis, Escherichia coli, Staphylococcus aureus, Mucor racemosus, Candida albicans) を用いてディスクアッセイを行い、結核菌と同じスクシニラーゼ経路をもつM. smegmatisとE. coliの2菌にのみ生育阻害を示すものを候補サンプルとした。これまでに、放線菌より11サンプル、糸状菌より1サンプル、計12の候補サンプルを見出した。 最終年度である平成27年度は、昨年度のスクリーニングによって見出された放線菌由来候補サンプル(K12-0214培養抽出液)について、活性物質の精製を進めた。この候補サンプル中に含まれる活性物質は、各種溶媒を用いた分配試験、限外ろ過による検討の結果、水溶性低分子物質であると予測された。 活性物質を単離するために、Streptomyces sp. K12-0214を三角フラスコ(培養容量は100 ml / 本)にて大量培養し、イオン交換クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー等を用いて 活性物質の精製を進めた結果、活性炭に吸着し、酸性50%アセトンで溶出されること、セルロース薄層板を用いてn-ブタノール:酢酸:水の系で展開することにより大部分の夾雑物を排除できること、Shodexカラム(ポリマー系逆相カラム)で非吸着画分に溶出されることなどが明らかになり、HPLCにおいて活性ピークもほぼ特定できた。現在、構造決定に必要な量の獲得をめざしてさらに回収率のよい精製方法を検討している。
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