研究課題/領域番号 |
26670050
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
供田 洋 北里大学, 薬学部, 教授 (70164043)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マルチ銅オキシダーゼ / ビアリルカップリング酵素 / ダイナピノンA |
研究実績の概要 |
本研究を遂行する上で鍵は、モナピノン二量化酵素(monapinone coupling enzyme, MCE)が軸異性を有するビアリル型ナフトキノンを生成する反応機構を解析することである。そのために、今年度(1年目)は2つの方向性からMCEの大量精製を試みており、X線結晶構造解析へと展開させる(2~3年目)。 すなわち1つ目のアプローチとして、MCEcDNAをTalaromyces pinophilus FKI-3864のRNAから調製し、これを各種大腸菌発現ベクターおよび酵母発現ベクターに連結し大量発現を試みた。これまでに、T7 promoterおよび低温発現型promoterの制御下、Hisタグ融合MCE、およびGST融合MCEの発現を検討した。また、宿主としてE.coli BL21とE. coli Rosetta-gamiを検討した。いずれの組合せにおいても目的の分子量のタンパク質が発現していることをSDS-PAGEで確認したが、MCE活性は検出されなかった。一方、酵母を宿主としてGal1プロモーター制御下で発現を試みたところ、MCE活性が検出された。ここまでの結果からMCEの発現には真核生物の系が適していることが明らかとなったので、現在真菌のタンパク質発現系を利用してタグ付きMCEの発現を検討している。 2つ目のアプローチとして、これまでに確立したT. pinophilus FKI-3864からのMCE精製方法の改善を試みた。すなわち、菌体破砕時、EDTAを含まないprotease inhibitorの添加が精製過程で生じる断片化を抑制することが明らかとなった。精製方法はすでに確立しており、Sephacryl S-200カラムクロマトグタフィーを行うことにより比活性と回収率で従来法より優れたMCE精製法を確立できると考えており、MCEの大量精製を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タグを付加したMCEをリコンビナントタンパク質として生産し、アフィニティカラムを用いて精製する計画に従って、様々な発現方法を試みた結果、真核生物の宿主ベクター系を用いることが適切であることが判明した。今年度は真菌の発現系を用いたMCEの大量生産方法の確立を行う。また、元の生産菌から酵素を効率よく調製する方法の確立を引き続き進める。酵素の大量調製に関して2つのアプローチで進めることにより、MCEの結晶化を遂行できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
① MCEの大量調製方法の確立:H26年度に引き続きMCEの精製を、遺伝子組み換え真菌から、およびDPA生産菌からの2つのアプローチで検討する。精製酵素を安定して供給できるシステムを早急に確立し、結晶化の検討を始める。また、精製酵素を用いて様々な非天然型のジヒドロナフトキノン二量体化合物をin vitroで合成し、生物活性を評価する。さらに、いまだ作用機序が不明なdinapinone Aの標識化合物の作成を、MCEを用いた酵素反応により検討し、ケミカルバイオロジー研究へ応用する。 ② Vioxanthin生合成に関わる二量体化酵素の解析:Vioxanthinはdinapinoneと類似した構造を有する天然化合物で、ジヒドロナフトキノン骨格を有する2分子のsemivioxaithinが芳香族環の8位で炭素-炭素結合したビアリル型二量体化合物である。Vioxanthinの生合成経路はdinapinoneと類似しているものと推定され、二量体化に関わる酵素(semivioxanthin coupling 酵素、SCEと略す)とmonapinone coupling 酵素(MCE)の類似性に興味がもたれる。特に、昨年度の成果に述べえたように、MCEの大腸菌による大量生産が困難な状況において、SCEの酵素学的解析を行うことで、MCEに関する当初の目標を補完することが期待される。そこで、vioxanthin生産菌Penicillium citrenignum ATCC42743 (Penicillium citreoviride)のvioxanthin生合成遺伝子の解析を行う。すでに、ゲノム配列のシークエンシングは外部に委託しており、解析結果が納入され次第vioxanthin生合成遺伝子クラスターおよびSCEの検索、解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたゲノム塩基配列の解析が年度内に終了せず、納品が次年度になったため、当概年度の予算に繰り越しが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
請求があり次第、支払いを実行し、繰り越しを解消する。本年度使用分については、申請当初の研究計画および今後の研究の推進方策にしたがって進めていく。
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