研究実績の概要 |
本研究では、我々が真菌Talaromyces pinophilus FKI-3864から発見したモナピノンA (MPA)をビアリル型二量体化合物ダイナピノンA (DPA)へと生合成するモナピノン二量化酵素(monapinone coupling enzyme, MCE)に焦点をあて、軸異性を有するビアリル型ナフトキノンを生成する反応機構を明らかにすることを目的とする。平成28年度は、精製したMCEを用いて、1) MP類以外の多環性芳香族化合物をもちいた基質特異性を検討した。さらに、2) DPAやMPAと類似の構造を有するビオキサンチン(VX)やセミビオキサンチン(SVX)の生産菌から、二量体化に関わる酵素(semivioxanthin coupling enzyme, SCE)についても検討した。 1) MCEに関する研究 これまで、MPAとMPBからMPEをそれぞれ反応させて、ホモ二量体DPAの他にMPAとMPBからMPEが位置選択的に結合したヘテロ二量体DPABからDPAEが生成し、これら全てに2つの軸異性体が存在することを確認した。またMPEからホモ二量体DPE1(M体)とDPE2 (P体) も生成した。そこで、MCE酵素反応の高かったMPAとMPEを用いて、類縁化合物SVXや多環性芳香族化合物との反応を検討した結果、新規ヘテロ二量体5成分を見出し、全てに2つの軸異性体が存在することを確認した。現在、新規ヘテロ二量体5成分の精製を進め、生物活性(中性脂質蓄積阻害活性など)の評価を進めている。 2) SCEに関する研究 VX生産菌からゲノム情報から二量体化酵素SCEの候補遺伝子を特定し、Aspergillus oryzaeに発現させ、SVXを用いてSCE酵素活性を確認した。現在、VX生産菌からのSCE精製も進めており、両者の酵素学的特徴の比較を進めている。
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