研究課題/領域番号 |
26670052
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
影近 弘之 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (20177348)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヒストンメチル化酵素 / 酵素阻害剤 / リシン / N―メチルリシン / 芳香族求核置換反応 / シプロヘプタジン / 構造活性相関 |
研究実績の概要 |
ヒストンのメチル化は、ヒストンメチル化酵素とヒストン脱メチル化酵素によって制御されているが、例えばヒストンのアセチル化等と比べると不明な点が多い。本研究では、ヒストンメチル化酵素選択的な新規阻害剤の開発を目的とする。本年度は以下の研究を行った。 1)リシン残基メチル化の簡便なスクリーニング系の構築:N-メチル化リシンの定量法を確立し、ヒストンメチル化酵素阻害剤探索のスクリー人下系の構築を検討した。アミノ基の定量に用いられるTNBS法をもとに、アミノ基と各種求電子剤との芳香族求核置換反応を詳細に解析したところ、1-Fluoro-2,5-dinitrobenzeneがリシンよりもN-メチルリシンと13倍速く反応すること、また、それぞれの生成物のUV吸収スペクトルが著しく異なることを見いだした。本結果をもとに、リシンもしくはN-メチルリシン含有ペプチドの定量ができることを見いだした。一方で、スクリーニングに応用するためには、種々の前処理を必要とし、感度を向上させる必要があることもわかった。 2)ヒストンメチル化酵素活性検出法の開発:ヒストンメチル化酵素はAdoMetを補酵素として用い、基質のリシンアミノ基をメチル化する。リシンアミノ基と反応し、イミン結合を形成するアルデヒド基を導入した補酵素の誘導体を設計、合成した。現在、その機能を解析している。 3)ヒストンメチル化酵素SET7/9の阻害剤の開発:化合物ライブラリーを用いたヒストンメチル化酵素SET7/9の阻害剤の探索により、阻害活性を有することをみいだしたシプロヘプタジンをもとに、その構造t根会を図った。特に、今年度はピペリジン環への置換基導入による誘導体を合成し、その構造活性相関を検討した。その結果、piperidine環上の置換基導入のほとんどが活性の低下を引き起こし、構造要求性が高いことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒストンメチル化酵素阻害剤の開発は、ヒストンアセチル化酵素と比べても研究が立ち後れている.その要因の1つは、簡便なスクリーニング法の欠如があげられる。そこで、新たなスクリーニング法の構築が本研究の課題の1つである。その観点からは、リシンとN-メチル化リシンを区別する有用な反応および反応剤を見いだし、両者を含むペプチドの混合比を見積もることに成功し、スクリーニング系構築の基礎反応系を確立したと言える。一方で、ハイスループットスクリーニングに応用するために克服すべき問題点が明らかとなり、来年度以降の課題であるといえる。 また、新しいヒストンメチル化酵素活性検出法の開発にも取り組み、異なる手法によるケミカルバイオロジー研究のツールの開発が進んだ。 阻害剤開発については、すでにヒストンメチル化酵素の1つであるSet7/9の阻害活性を見いだしているシプロヘプタジンの構造展開を図ったが、これまでのところ、活性の向上は見られなかった。しかし、シプロヘプタジンの構造特性や、ピペリジン環部位の構造要求性の高さ等の知見が得られたため、今後の構造活性相関研究に有用な情報となると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ヒストンメチル化酵素阻害剤探索のためのスクリーニング方の確立については、初年度に見いだした芳香族求核置換反応を基盤として、分光学的な手法によって解析する方法を確立することを目指す。感度の向上については、本反応系をもとに蛍光法へ応用した手法も検討する。 新しいヒストンメチル化酵素活性検出法の開発については、初年度に合成した補酵素誘導体の機能を解析し、必要に応じて構造最適化を図りつつ、検出法への応用を図る。 ヒストンメチル化酵素Set7/9阻害剤開発については、シプロヘプタジンの三環性部分の構造活性相関を詳細に検討し、高活性阻害剤の探索を行う。
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