がんの薬物治療を前進させるためには、抗がん剤抵抗性であるがん幹細胞(Cancer Stem Cell; CSC)をたたく方法論が必要である。CSCの抗がん剤抵抗性は、細胞周期が静止期に維持されていることに大きく依存することが知られているが、近年、CSCの細胞周期静止メカニズムが、IFN-αのシグナル伝達抑制によることが明らかとなってきた。これは、強力なIFN-α のシグナルを加えることができれば、CSCの抗がん剤抵抗性を解除できることを意味する。そこで本研究では、独自の「タンパク質機能改変体創製技術」を駆使することで、生物活性に優れた機能改変型IFN-α を創製し、それによりCSCの抗がん剤抵抗性を打破するという、シンプルかつ有効ながん治療法の可能性を探る。上記目的に対し、平成26年度の研究では、生物活性を変化・向上させた機能改変型IFN-αの創製と、その活性評価を試みた。 まず、IFN-α8のアミノ酸残基の中で、レセプター(IFNAR1およびR2)との相互作用に関わるアミノ酸残基を他の20種のアミノ酸にランダマイズしたIFN-α8機能改変体の遺伝子ライブラリを構築した。それを大腸菌TG1に導入し、ファージを産生させることで、IFN-α8改変体を網羅的に表面提示したライブラリを構築した。上記ライブラリ中から、各IFNレセプターサブタイプに対する親和性が異なるIFN-α8改変体発現ファージを濃縮・単離し、遺伝子配列を解析したうえで、大腸菌発現系にてIFN-α8リコンビナントタンパク質を作製した。精製したIFN-α8タンパク質を用いて、レセプター親和性評価、バイオアッセイによる活性評価および安定性評価を行った結果、生物活性に優れた機能改変型IFN-αを得ることができた。 今後、がん細胞、あるいはCSCに対する作用の評価を進める予定である。
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