研究実績の概要 |
細菌感染の成立には,細菌の宿主への接着および引き続く浸潤が重要な過程となる.本研究では以下の2点に焦点を当て研究を進めた. 1)これまでに黄色ブドウ球菌の産生するstaphylococcal superantigen-like protein-5 (SSL-5) が,白血球の感染局所への移動に重要な役割を果たすマトリックスメタロプロテイナーゼ-9 (MMP-9) に結合し,その活性を阻害することを観察した.SSL-5とMMP-9の相互作用を解析するために,組換え型のSSL-5をHis-tagおよびGST融合タンパク質として大腸菌で発現させ,それぞれ精製・単離した.SSL-5がMMP-9以外にも細胞膜タンパク質や血漿タンパク質と結合することを見出だしたので,結合反応に糖鎖が関与する可能性を考え,白血球由来のMMP-9をシアリダーゼあるいはペプチド:N-グリカナーゼ (PNGase) で処理した後に結合を調べた.その結果,MMP-9とSSL-5の結合は,両酵素で処理することにより減弱することがわかり,両者の結合がシアル酸を含む糖鎖に依存するものであることが示唆された.MMP-9に存在するN-結合型あるいはO-結合型糖鎖のいずれにSSL-5が結合するのか,さらに研究を進めている. 2)セレクチン依存性の白血球接着反応に対する細菌由来分泌タンパク質の影響を調べるためにP-セレクチン/Fc融合キメラタンパク質を調製した.各種細菌 (A. hydrophila, E. coli, L. monocytogenes, M. bovis, S. aureus) 培養上清より,このキメラタンパク質と結合するタンパク質の探索を行ったところ,それぞれの細菌の培養上清から複数の異なる結合タンパク質が検出された.現在,これらのタンパク質の性状について解析している.
|