研究課題/領域番号 |
26670068
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
角 大悟 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (30400683)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 選択的スプライシング / ヒ素化合物 / 酸化ストレス / パラコート / 環境化学物質 |
研究実績の概要 |
本研究では、化学物質の毒性発現機序においてmRNAの品質機構が損傷をうけているのではないかと考え、mRNAの品質機構のなかでも選択的スプライシングが化学物質により惹起されるのではないかと仮説を立て研究を進めている。 まず、最初に環境化学物質に曝された細胞において酸化ストレスが亢進することから、過酸化水素にヒト肝ガン細胞を曝露し、選択的スプライシングが惹起されるかについて検討した。その結果、当研究室で選択的スプライシングを受けることが明らかとなっているヒ素メチル基転移酵素(AS3MT)mRNAについて検討を進めたところ、AS3MT mRNAの3番目から9番目エキソンがスキップされたΔ3-9 mRNAが検出された。データベースを用い解析したところ、エキソン認識に必要なSRp40がAS3MT mRNAのスプライシングに重要であることが考えられた。そこで、過酸化水素曝露によるSRp40発現を検出したところ、過酸化水素により顕著にSRp40発現レベルが減少していることが明らかとなった。現在、その機序について検討を進めている。 一方、ヒ素曝露により惹起される選択的スプライシングを網羅的に解析するために、亜ヒ酸にヒト皮膚角化HaCaT細胞を2週間曝露し、totaRNAを採取後transcriptome arrayを実施した。その結果、Matrix metallo-proteinase 1および3において亜ヒ酸曝露による選択的スプライシングが明らかとなった。現在、Real-time-PCR法によって詳細に検討を進めている。 また、ビピリジニウム系除草剤であるパラコートをヒト神経芽細胞であるSH-SY5Y細胞に曝露したところ、すでに報告のあったApaf-1の選択的スプライシングを確認することができた。現在、Apaf1の選択的スプライシングの機序、ならびにApaf1以外のmRNAにおける選択的スプライシングについて検討をすすめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過酸化水素曝露によるAS3MT mRNAの選択的スプライシングの同定ならびにその機序の一端としてSRp40タンパク質の減少を見出している。 亜ヒ酸を用いた実験においては、新規選択的スプライシングを見出している。 パラコートを用いた実験においては、すでに明らかとなっている選択的スプライシングを検出する方法を確立しており、新規選択的スプライシングの検出にそれほど時間を要することがないと考えられる。 以上の研究結果から、本申請事項はおおむね順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は過酸化水素曝露によるSPp40の発現減少に関する機序の解析を行う。具体的には過酸化水素によるユビキチン/プロテアソーム系の活性化を考えている。ユビキチン/プロテアソーム系の阻害剤を用いた先行実験によると、過酸化水素によるSRp40の減少が抑制されてることから本システム活性化およびSRp40発現の人為的制御による選択的スプライシングの発生について検討する。 亜ヒ酸曝露による実験については、同定された新規選択的スプライシングについて、亜ヒ酸の曝露濃度および時間依存性について詳細に検討を進めていく。また、選択的スプライシングにより得られたタンパク質の機能解析も合わせて行う。 パラコートを用いた実験においては、パラコートを曝露した細胞からtotaRNAを採取後、transcriptome arrayを実施することで、パラコート曝露により惹起される新規選択的スプライシングの検出を試みる。
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