研究課題/領域番号 |
26670069
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
宮高 透喜 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (50157658)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヒ素汚染地域 / 淡水魚 / ヒ素スペシエーション / 尿中ヒ素 / 有機ヒ素 / 未知ヒ素化合物 |
研究実績の概要 |
アジア各地域での地下水によるヒ素汚染問題で、飲用制限にも関わらずヒ素による生体影響は残っている。そこで主なたんぱく源である淡水魚に着目し、摂食量とその総ヒ素、ヒ素化学形態による関与を検討した。アルセノベタインが主成分の海産魚とは異なり、淡水魚の総ヒ素量は明らかに少なかった。しかし、無機の3価・5価ヒ素、アルセノコリンなど海産魚になあまり見られない化学形態を見出し、定量することができた。 また、分析条件の検討においてヘリウムコリジョン法を検討することにより妨害ピーク(アルゴン-塩素 m/z :75)の除去が可能となり、無機5価ヒ素の定量が可能となった。溶離液をpH3(硝酸)とすることで、無機3価ヒ素(AsIII)、無機5価ヒ素(AsV)、モノメチル5価ヒ素(MMA)、ジメチル5価ヒ素(DMA)、アルセノベタイン(AsBe)、アルセノコリン(AsC)、トリメチルアルシンオキシド(TMAO)、テトラメチルヒ素(Tetra)をODSカラム(Capcellpak MG 5um 2.0*250mm Shiseido)を用いて効率よく分離定量することができた。 試料からの抽出方法に、水-メタノール混合溶液法を用いた。魚試料から、骨・皮を除去後身のみを切り出し湿重量を測定した。凍結乾燥後、ホモジナイザーを用い水-メタノールで抽出後、溶媒を除去、水を加えてHPLC試料とした。 実験試料としたカンボジアの淡水魚と住民の摂取状況から、ヒ素非汚染地域の住民は海産魚を主に摂取しているためアルセノベタインをメインとする有機ヒ素を、汚染地域では淡水魚から摂取しているが、予期に反してAsBeやDMAが多く含まれ、無機ヒ素の取り込みは少なかった。 結局汚染地域住民は淡水魚から多くヒ素を摂取しているが、尿中ヒ素濃度と魚の摂取量に相関性を見出すことはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分析条件の検討(ヘリウムコリジョン法、HPLC分離条件、抽出方法)等に予期せぬ時間がかかり、当初の目的である時間短縮、高脂溶性画分分析法、高脂溶性画分抽出方法の着手が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
上記遅延部分の解消と並行して、平成27年度計画である、HPLC-MS/MS条件の検討に入りたい。ヒ素化合物はイオンペアー試薬-緩衝液系でなければ検出できないことと、HPLC-MSではなるべく緩衝液を使わないという相反する条件を以下に解明していくかが課題となる。また、同条件下で単離精製し機器分析法を用いて化合物の同定を行いたい。その後、目的化合物の化学合成を行い、細胞レベル特にヒ素汚染地域では膀胱がんが多いことからURO-tsaなどを用いて毒性実験を行いたい。 このため、HPLC条件の検討が今年度の最大の課題となる。ヒ素化合物のスペシエーション分析においては、本研究で採用しているODS-酸性緩衝液-イオンペアー試薬法、主に尿分析で汎用されているアニオンカラム-塩基性緩衝液-アンモニア法があるが、特に前者はカチオン系、アニオン系のイオンペアー試薬を使用しなければ、全く保持されない。緩衝液の組成も多くの塩を含んでおり、このままではHPLC-MSに適用できない。HPLC-ICP-MSでも試料導入部や排気部に多くの塩が析出して問題となっている。水-メタノール系にギ酸やトリフルオロ酢酸、アンモニア等のみを用いて分析可能な方法を見出すことが、今後の研究における最大の課題となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ICP-MS用試料灰化装置に使用する容器チャンバーの開閉を補助する「自動開閉モジュールTWISTER」\40,800を発注していたが、年度内に輸入が間に合わず次年度へ繰り越した。また、旅費予算は、成果発表の機会が無かったので使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
納入が遅れていた自動開閉モジュールは、今年度初めに納入することができた。旅費については、研究成果の発表を行うため使用する予定である。
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