核酸クロマトグラフィーを利用して、患者のベッドサイドや外来の診療現場で簡便かつ迅速に薬剤反応性を予測する一塩基多型(SNP)検出法を開発することが本研究の目的である。現在までに開発されているSNP解析法として、PCR-制限酵素-電気泳動法、TaqMan PCR法、Hybridization Probe法、Invader 法、ダイレクトシークエンス法など様々な方法が挙げられるが、これらの方法は操作の煩雑性、高額な検出機器の必要性、解析結果を解釈するための専門的な知識を必要とするため、受託解析会社や大学・研究機関に依頼して行わざるをえない。しかしながら、実際の臨床現場で遺伝子解析結果を治療に応用するためには、簡便・迅速、低コスト、解析結果の容易な解釈が可能な方法が必要とされる。特に近年、抗凝固薬ワルファリンの代謝酵素であるCYP2C9と標的分子であるビタミンKエポキシド還元酵素複合体1(VKORC1)のSNPが同薬の凝固活性を予測する遺伝子多型マーカーとして注目されている。そこで、最終年度はCYP2C9の1075A>C及びVKORC1の1173C>T多型を同時に検出できる核酸クロマトグラフィー法を開発した。方法は、DNAタグ及びビオチンラベルした対立遺伝子特異的プライマーを用いてPCR法により増幅し、その産物をアビジンラベルした青色ナノ粒子を含む展開液と混合し、DNAタグと相補的な配列を持つ10塩基程度のオリゴDNAがライン上に塗布されたストリップに展開する。数分後、ストリップ上に青色のラインが検出された位置を読み取ることにより、SNPの有無を1本のストリップで検出できた。本法を用いることにより、血液のDNA精製から結果を得るまでに約2時間で検出が可能であった。研究期間全体を通じて、ミトコンドリアDNAの1555番目の遺伝子多型検出系も構築した。
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