研究実績の概要 |
本研究は、ヒト不死化脳毛細血管内皮細胞(HBMEC/ciβ)から分泌されるエキソソームを単離し、そこに内包される遺伝子発現情報から、細胞内の遺伝子発現量や機能を予測することを目的としている。この目的達成のため、まずエキソソーム単離条件の確立およびエキソソーム内遺伝子発現情報の解析をおこなった。 これまでに汎用されているエキソソーム単離法として、遠心法がある。本法を用いるためには大量の培養上清が必要であることから、HBMEC/ciβを100-mm dish 10枚を、エキソソーム除去培地を用いて培養した。この上清を回収して、まず500 g、10分、4℃で遠心し、その後3,000 g、10分、4℃および10,000 g、30分、4℃の遠心をおこなった。続いて、120,000 g、70分、4℃の遠心をおこない、この沈殿をPhosphate-buffered saline (PBS) (-)で洗浄し、再度120,000 g、70分、4℃の遠心をおこなった。この沈殿をPBS(-)で懸濁し、エキソソーム画分とした。 エキソソーム単離の検証のため、上記画分を4% Paraformaldehyde (PFA)で固定し、2%リンタングステン酸でネガティブ染色をおこなったのちに、電界放射型透過電子顕微鏡にて解析した。その結果、直径50-70 nmの球状の像が観察され、これは一般にエキソソームとされる形状と一致すると考えられた。 次に、エキソソーム画分からtotal RNAを抽出してcDNAを合成し、HBMEC/ciβに発現するmRNAの発現解析をRT-PCRによりおこなった。その結果、代表的な血液脳関門トランスポーターであるglucose transporter 1および密着結合タンパク質であるclaudin-5のmRNA発現が検出できた。 以上より、上記遠心法によりHBMEC/ciβからエキソソームが単離できること、またエキソソームから親細胞内の遺伝子発現情報が得られる可能性があることが、明らかとなった。
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