薬物の副作用は、中毒性機序と特異体質性機序によるものに大別できる。中毒性の副作用に関しては基本的に動物モデルを用いた評価が可能であるが、特異体質性副作用に関する評価モデルは確立されていない。一方で特異体質性副作用には、重篤な症状を呈する例が多く含まれており、臨床上重要な未解決課題となっている。平成26年度は、過去にtype I HLAの遺伝子型と副作用発症の間に相関関係が報告されている化合物に関して、それぞれ関連が報告されているHLA型、およびアミノ酸配列が最も類似しているが関連性の報告されていないHLA型を比較対照として、それぞれアデノウィルス発現ベクターを構築した。次いで、各遺伝子型のHLAを過剰発現させたHeLa細胞を各化合物の存在下で培養し、分泌されたHLA分子を回収・精製し、HLA分子に含まれる化合物をLC-MS/MSを用いて測定した。その結果、abacavirおよびnevirapineのみ有意な結合が検出された。平成27年度は、新規に見出されたnevirapineのケースに関して検討を深め、nevirapine暴露が抗原提示されるペプチドレパートリーに対して与える影響を、nano-LCと連結した高分解能フーリエ変換型質量分析装置によって解析した。その結果、提示される抗原ペプチドレパートリーのC末端残基に関して、nevirapine暴露条件下ではAおよびVの出現頻度が有意に増加しており、nevirapine暴露の無い条件下と比較して3倍前後の差が認められた。また逆に、nevirapine非存在下で最も出現頻度の高いFに関しては、nevirapine暴露に伴って出現頻度が有意に低下することが確認された。一連の結果は、nevirapine分子がHLA抗原結合溝内部のFポケット周辺に結合する可能性を示唆している。
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